財務に悩む経営者(中小企業)に「しっかり寄り添う対応」を信念とする。国税局の立場と税理士の立場の両方を経験している税務業界40年の大ベテラン。法人税、所得税、相続税・贈与税、税務相談・申告、事業継承、税務調査対応など幅広業務を対応
リース、レンタル、割賦と減価償却の関係
会社は毎年いろいろなモノを取得します。モノを取得する際に考えることは、そのモノは経費計上できるのか・資産計上しなければいけないのかです。
簡単に説明をすると、
1,000万円を売り上げて使った経費(購入したモノや人件費)が700万円であれば、利益は300万円です。そして、300万円の利益に対して税金(法人税等)がかかリ、最終利益(当期純利益)となります。
つまり来期の現金(勘定科目)に300万円が繰り越されます。
損益計算書の「利益」に関する詳細は下記をご覧ください。
損益計算書と一緒に学ぶ「収益」「費用」「利益」ところが、会計経理上では取得したモノ全てが単純な経費として処理できないことがあります。これが固定資産です。固定資産は1年ではなく、複数年に渡って使い続けるモノが対象になります。
一例として240万円の車を購入した場合、2年(24ヵ月)に渡って毎月10万円ずつ経費計上していく処理が必要になります。
期中に購入した場合は、期中内で経過した期間のみが償却の対象期間になりますので注意が必要です。
「複数年に渡って使い続ける=複数年に渡って経費計上をする処理」のことを減価償却と言います。
減価償却の概念詳しく知りたい場合は以下をご参考に。
中古車の耐用年数に関する詳細は下記をご覧ください。
計算方法が図式でわかる!中古資産の耐用年数会社の会計は1年毎の計算で考えられます。そのため、家賃、電気代、人件費、広告費などほとんどの経費は期をまたぐことはありません。
ところが、固定資産に計上される不動産や機械類、権利などは、必ず複数年使われる前提のものばかりです。
複数年使えるものをその期だけの会計処理だけで済ませてしまうと、実際の会社の経営状態と数字が合わなくなってしまうかもしれません。
しかも、使い方や使う人によって、劣化の具合が違います。つまり、どれだけの期間使えるかが変わってきます。
当然、金額が大きい固定資産は減価償却を考えるため、会計処理は面倒になります。会社の経営やキャッシュフローを考えると、減価償却とキャッシュをうまくコントロールしなければいけません。
下記では、支払いにより現金が減っても、減価償却の分しか経費計上できず納税額が想定より多くなるケースです。手元資金が減るので、利益の約22%前後の納税額が重くのしかかります。
そのため、会社に必要なモノを取得する方法も経営方針の重要な一手と言えるでしょう。モノの取得方法は一般的に、「一括購入」「リース」「レンタル」「割賦」が考えられます。
そこで今回は、一括購入・リース・レンタル・割賦をどう使い分けるのか、それぞれの特徴とメリット・デメリットのお話をしたいと思います。
割賦とは
まずは一番わかり易い割賦です。「ローン」の方がピンと来る方もいるでしょう。
たとえば新車を3年割賦で購入する場合、「年12回×3年=36回払い」でその車を購入するということです。
新車費用が180万円、金利費用が36万円の場合、月々の支払いは6万円ということになります。
割賦のメリット1.支払いは割賦期間のみ
3年間の割賦期間が終われば支払いはありません。つまり、その後1年所有しようが、5年所有しようが車自体の代金は発生しないことになります。
割賦のメリット2.資産になるため現金化できる
割賦残債を支払い終えた時点で車は買い手の所有物になるため、売却することが可能になります。
契約内容によりますが、商品売却益が割賦残債と相殺以上が行える場合は、その時点で売却することも可能です。
割賦のデメリット1.一括購入と比べると割高
もちろん一括購入の場合と比べると、割賦会社に支払う月々の費用があるので割高になります。
割賦のデメリット2.中途解約ができない
割賦が終了するまで中途解約はできません。商品の所有権は、「契約満了時=割賦終了時」に所有権が買い手に移ります。
割賦のデメリット3.固定資産税がかかる
割賦で購入した資産には固定資産税が発生します。
割賦のデメリット4.維持費等は買い手持ち
一般的に、割賦終了までは商品の所有権は売り手の保留状態となります。ただし、その間にかかる維持費等の費用は買い手持ちになります。これを所有権留保と言います。
リースとは
リースも割賦と同様、複数年の契約で月々払いを行いますが、所有者はあくまでもリース会社であり、商品は借りて使っているということになります。
そのため、契約満了時には商品を返すか、同じものをさらに低価格で再リースするかのどちらかが一般的です。
たとえば、新車を5年リースで借りる場合、「年12回×5年=60回払い」でその車を使える契約を結びます。
新車費用が180万円、リース料が36万円の場合、月々の支払いは3.6万円ということになります。
リースのメリット1.月々の支払いが経費処理できる
所有権を持たないため固定資産計上にはなりません※。当然、減価償却も行われません。そのため、月々のリース料は経費処理することができます。
※2015年10月時点
リースのメリット2.各種税金を支払う必要がない
リース商品は所有権がリース会社にあるため、固定資産税等を支払う必要がありません※。
※2015年10月時点
リースのメリット3.別途維持費を考えなくて良い
リース商品は、維持費、保険、税金等を加味した上でリース料率が課されています。そのため、1本化され面倒な手間が省け、余計なコストがかかりません。
リースのデメリット1.中途解約ができない
リースは、リース会社が特定の商品を仕入れてから貸出を行うため、不必要になっても途中での解約は認められません。
リースのデメリット2.購入と比べると総額で割高になる
こちらも割賦と同様、リース料率があるため一括購入に比べると割高になります。
リースのデメリット3.支払い終えても自社の物にならない
リースは、割賦のように商品を購入するわけではないので、リースが終了したらリース会社に返却、または再リースになります。
レンタルとは
レンタルは、レンタル会社にある商品を賃貸借契約によって借りることを言います。
賃借料金は借りるものによってバラバラですが、契約期間の縛りが緩いことが多いため、基本的にリースや割賦よりも割高になります。
もちろん、レンタル商品の所有権はレンタル会社にあります。
たとえば車をレンタルする場合、必要な期間だけ借りその月数(日数)分の賃借料金を支払いますが、軽自動車やコンパクトカーでも月次で7万~10万円ほどするため、かなり割高になります。
レンタルのメリット1.月々の支払いが経費処理できる
リースと同様、レンタルも月次支払いが経費になります。
レンタルのメリット2.短期契約が可能
レンタルは、レンタル会社にあるも商品を一定の期間をもって借りる契約であるため、長期間の契約の縛りを受けないことがほとんどです。
レンタルのメリット3.各種税金を考える必要がない
こちらもリース同様、所有権がレンタル会社にあるので、固定資産税等の申請の必要がありません。
レンタルのデメリット1.借りてが商品を選べない
レンタルはあくまでもレンタル会社にあるものを借りるだけなので、多くの場合は新品ではなく中古商品を借りることになります。
レンタルのデメリット2.リースよりも割高になる
レンタル商品は、短期で借りられることがメリットです。そのため、長期レンタルになると費用はかなり割高になります。
リースとレンタルと割賦の違いまとめ
リース・レンタル・割賦それぞれの良いところと悪いところを理解できれば、自社の現状を鑑みて何を使ったら良いかがすぐに分かるはずです。
リースが良いのか、レンタルなのか、又は割賦なのかは、購入にかかる費用(支払い)が下記の損益計算書と貸借対照表のどこに該当するのかをイメージすると「節税が良いのか」「キャッシュを手元に残す方がよいのか」の方針を決めることができると思います。
顧問先から「車等を導入する際、購入かレンタルかリースのどれが一番良いか?」と聞かれるケースがよくあります。
節税したいという考えれであれば、レンタルやリースが良いかもしれんが、キャッシュフローを考慮すると購入がよいと思います。
また、使用頻度が多かったり、製品の最新システムが常に必要な場合はレンタルやリースが良いでしょう。
特に、起業当初は使える金額も限られた中で必要な資産を購入したり、リースしたり、レンタルで済ませたりと、いろいろと考える必要があります。
もしも、会社で必要なモノがあるのなら、業者に進められたからという理由だけで安易に利用方法を決めずに、リース・レンタル・割賦に一括購入を含めた4つのパターンで検討してみましょう。
なお、今なら減価償却の特例を受けられる「生産性向上設備投資促進税制」を活用できます。この税制は固定資産の購入意識を変えるかもしれない制度なので、必ず確認するようにしてください。
参考:
簡単にわかる生産性向上設備投資促進税制の減価償却メリット
また、少額減価償却資産に該当する場合は、処理方法を自分で選択できるかもしれません。以下も理解して、経営に生かせるように押さえておきましょう。
参考:
中小企業や個人事業主が使える少額減価償却資産の特例とは
財務に悩む経営者(中小企業)に「しっかり寄り添う対応」を信念とする。国税局の立場と税理士の立場の両方を経験している税務業界40年の大ベテラン。法人税、所得税、相続税・贈与税、税務相談・申告、事業継承、税務調査対応など幅広業務を対応