財務に悩む経営者(中小企業)に「しっかり寄り添う対応」を信念とする。国税局の立場と税理士の立場の両方を経験している税務業界40年の大ベテラン。法人税、所得税、相続税・贈与税、税務相談・申告、事業継承、税務調査対応など幅広業務を対応
経理と会計と財務の違い
会社のお金の動きを理解して、計算して、今の状況を把握したり、未来を見据えて数字の予測をしたり……。もちろんあなたの会社で行っていることです。
こういったお金の管理や計算のことを「会計」と言いますか?「経理」と言いますか?それとも「財務」なんて言ったりしますか?
「全部お金の動きのことでしょ?それは経理に任せてあるよ。」
いいえ、会計と経理と財務は似ているようですが意味が違います。
そして、会社が大きくなるほどこの3つの言葉は明確に違うものになりますし、会社経営で頻繁に使われるようになっていきます。
そのため、社長であればこの言葉の意味を間違えて使ってしまってはいけないのです。
今回は、会計と経理と財務の言葉の意味をしっかりと把握して、今後使い分けをできるようにしましょうというお話しです。
会計とは?
まず会計(英語ではアカウンティング(Accounting)と呼ぶ)について説明します。
飲食店などに行って支払いをする際に「お会計お願いします。」と言います。この時の会計はお金の計算を意味します。
また、家計簿をつけること、国や団体のお金の管理のことも会計と言ったりします。
会計の本来の意味は、「お金の出入りを帳簿などに記録すること」です。お金単体だけでなく、お金と物の交換によってお金がプラスされたり、物がマイナスされたりなどの記録も全て会計にあたります。
つまり、「会計とは概念なのだ」とイメージすると以降の説明がスッキリすると思います。
後ほど詳しくご説明しますが、会計には、管理会計と財務会計の2種類があります。
それぞれ目的が異なります。
経理とは?
経理とは?
経理とは正式には経営管理という言葉の略称です。
会社の中に経理部があっても、会計部というものはあまり聞いたことがありません。そのため、経理は会計と全くの別物と考えている方もいるかもしれませんが少し違います。
経理は、会計の中のお金の処理の1つです。
会計の中でも、より公的な会社業務に繋がるお金の処理のことを経理と言います。伝票の起票、帳簿記帳、請求、支払い、税金の申告、決算書の作成などが経理の仕事にあたります。
もっと簡単に言えば、「お金の処理を公的書類」に残すことです。
会社内外で流れているお金の情報を収集して、決められたルールで体系化してまとめ、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書(C/S)などの公的に提示する必要がある計算書類にすることが経理です。
貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)は税務申告時には必須の書類なので、まさに公的書類となります。
その公的書類を作り上げる前段の処理が伝票の起票、帳簿記帳、請求、支払い等を記録することなのです。
一般的には、税理士が決算書を作成しますが、人員に余裕がある会社は経理で決算書(財務諸表)を作成します。
更に、4半期に一度決算書の締め処理を行うのも経理部の仕事の1つです。
大事な経理の役割
計算書類を作成することが経理か。そう思った貴方。侮ってはいけません。
誤解されがちなのですが、経理の役割は単に書類を作成することではありません。
経営資源と言われる「ヒト」・「モノ」・「カネ」などを管理し、企業の目指すビジョンに向けて経営資源を最適に活用する方法を検討することが経理の重要な役割です。
そのため、小規模な企業であれば、社長が一人で経営管理を行うこともありますが、企業の規模が大きくなればなるほど、経理専門の部署が設けられることが多いです。
財務とは?
財務も会計や経理の仲間なのか?と言われると、こちらも実は違います。そして、一番勘違いされるのが財務です。
勘違いの原因は、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書(C/S)などの決算書を経理が作成することがあるためでしょう。
さらに、次で説明する「財務会計」との混同もあると思います。
財務の仕事は、企業の資金調達(銀行融資、株式発行など)、予算管理、資金調達、資金運用(投資、M&Aなど)などです。
会社の事業拡大時や今回のコロナウイルスのような未曾有の経済状況に陥った場合には手元にお金が必要となります。
将来を見据え普段から銀行との関係を保ち、必要な時に銀行から資金を調達できる準備を行う。
また、お金を眠らせるだけではなく、資金運用により手元資金を膨らませることも財務の仕事です。
財務担当は、経理の経験にプラスして「経済の仕組みに関する知見」や「銀行との交渉術」が必要となりますので、元銀行員や以前会社経営を行った方が財務担当するケースが多いです。
財務担当の仕事は、金融機関と折衝するための専門知識と先を見据えた計画実行能力が必要になります。
財務の知見や経験そして人脈を持っている人材は給与が高く、小さな会社では給与負担が大きくなります。
その為、中小企業では財務担当者を置くケースは少なく、経理担当者や社長が財務を担当する場合がほとんどです。
経理は企業から出ていく経費や利益の算出を担当し、財務は事業活動に必要なお金を集めて管理する業務とイメージすればわかりやすいと思います。
財務管理に関する詳細は下記をご覧ください。
経営者として知っておきたい財務管理の基本会計には管理会計と財務会計がある
さて、会計と経理の関係をもう少し掘り下げてみましょう。
会計の中には、「管理会計」と「財務会計」があります。
管理会計とは?
管理会計は社内において経営者や企業内部の管理者に対する情報提供を目的とする会計のことです。いわば売上管理、コスト管理、利益管理、及び分析です。
これらの管理は部署単位で行われたり、経営企画部でまとめられたりしていますね。そのため数値情報の収集作業も含めると、会社の中で管理会計に携わっている人は割と多くいることになります。
管理会計は、社長などの社内管理者に売上やコストの管理等の情報提供を目的とした会計となります。
財務会計とは?
次に財務会計とは、決算書等の会計情報を企業内外に公表することを目的とした会計のことです。
つまり、公的に決められたルールに従って伝票の起票、帳簿記帳、請求、支払い、税金の申告によるお金の流れをまとめ、決算書を作成する行為になります。
経理業務全般の業務であり、株主、債権者、取引先などの利害関係者に向けた財務諸表の作成・報告を目的とした会計になります。
財務会計と管理会計の違い
財務会計と管理会計では作る目的、見せる相手が異なります。
まず、管理会計は、自社内で活用するための会計情報です。そのため、決められた方法はなく、自社で経営者や管理者向けに、経営計画を立てる際に必要な情報をわかりやすくまとめる必要があります。
一方、財務会計は社外のステークホルダー(利害関係者)に対し、自社の経営実績を報告し、利害を調整したり、税務署へ提出するための会計情報ですので、定められたルールに則り会計処理を行う必要があります。
名称 | 財務会計 | 管理会計 |
---|---|---|
目的 | 自社の経営成績を示し、利害を調整する為に作る | 自社内で活用する為の会計情報。 |
用途 | 会社の外部へ自社の情報を報告する為に使用される。 | 将来の経営計画の為に分析・活用される。 |
見せる相手 | 企業のステークホルダー(利害関係者) | 自社の経営者や部門の管理者など |
作業方法 | 決められた会計ルールに従って会計処理をする必要がある。 | 決められた方法はない。会社独自で有用な形で作る |
会計と経理と財務の違いのまとめ
私たちの会社は、大きく会計と財務の両輪があって運営されています。というわけで、それぞれざっくりまとめてみましょう。
- 会計…お金に関する記録、計算、管理全般のこと。入出金の管理のこと。
- 管理会計…経営者や企業内部の管理者に対する情報提供を目的とする会計のこと。
- 財務会計…決算書等の会計情報を、企業内外に公表することを目的とする会計のこと。
- 経理…主にお金に関する情報を識別し、測定し、伝達するプロセスのこと。
- 財務…会計情報を元に会社の資金計画を立てたり、会計の流れとは別のお金の流れを生みだす行為(資金調達など)のこと。
事業活動で発生した数字が「管理会計」でまとめられ、「財務会計」内の「経理」に渡されます。
「経理」ではお金の計算がされ決算書などが作られ「財務」に渡されます。
「財務」は決算書などを元に資金運用を企画したり、資金繰り先と折衝をします。
会社の体制によって決算書を作る行為を外部依頼したり、財務を社長が行うなどの違いはありますが、会計と財務の連携がうまくとれていないと会社経営は良くなりません。
そして社長は、会計が作った決算書に責任を持たなければいけませんし、財務が計画した資金運用や資金繰りの最終判断をしなければいけません。
やはり、社長は数字に強くないといけないですね。
財務に悩む経営者(中小企業)に「しっかり寄り添う対応」を信念とする。国税局の立場と税理士の立場の両方を経験している税務業界40年の大ベテラン。法人税、所得税、相続税・贈与税、税務相談・申告、事業継承、税務調査対応など幅広業務を対応