少額減価償却資産の特例とは
企業が購入した設備などの資産は固定資産として計上されます。そして、その固定資産の耐用年数に応じて、複数年に渡って減価償却処理されます。
そのため、減価償却される固定資産のことを減価償却資産とも呼びます。
通常、15万円のパソコンは耐用年数4年の減価償却資産、25万円のパソコン用ソフトウェアは5年の減価償却資産として処理しなければいけません。
電子計算機
パーソナルコンピュータ:4年
その他のもの:5年参考:
減価償却資産の種類と耐用年数一覧
ところが、30万円未満の減価償却資産の場合、一定の条件を満たせば全額を一括で償却(会計上の損金算入)することが可能です。この処理のことを「少額減価償却資産の特例」と言います。
また、年度途中に取得した減価償却資産は月割分の減価償却費しか損金算入できませんが、「少額減価償却資産の特例」を利用すれば、例え年度末に購入した減価償却資産でも全額を経費・損金参入できるわけです。
これは中小企業にとって大きな節税、キャッシュフローの好転に繋がります。
そこで今回は、「少額減価償却資産の特例」をフル活用するために知っておくべきポイントをいくつかお話したいと思います。
少額減価償却資産の特例の特徴1.対象資産と対象企業
「少額減価償却資産の特例」の対象になる資産は、取得価額が30万円未満の減価償却資産に限られます。新品、中古は問いません。
仮に商品価格が290,000円、消費税が23,200円(8%=2015年9月現在)だった場合、あなたの会社が税込経理か、税抜経理によって扱いが変わります。
税込経理をしている会社は、この商品は「少額減価償却資産の特例」対象にはなりませんが、税抜経理であれば「少額減価償却資産の特例」対象になります。
次に、「少額減価償却資産の特例」の対象企業は、青色申告をしている中小企業(出資金が1億円以下、従業員数が1,000人以下の企業)と個人事業主です。白色申告者と大企業は対象になりません。
また、「少額減価償却資産の特例」を利用したい場合は、確定申告時に「別表十六(七)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」を添付して提出しなければいけません。
少額減価償却資産の特例の特徴2.年間上限価額
「少額減価償却資産の特例」は、当該期中に取得した30万円未満の減価償却資産の合計額300万円未満が対象になります。
たとえば、16万円のパソコンを19台買って50,000円割引してもらった場合、合計金額は300万円未満になるため、全て「少額減価償却資産の特例」対象です(税抜経理の場合)。
16万円×19台-50,000円=299万円
起業初年度や決算月変更などにより当該期が12か月未満の場合は、300万円を月割した金額未満が上限になります。たとえば、期首が4月で期末が12月の場合は、300万円ではなく200万円が上限になります。
300万円÷12か月×8か月=200万円
ちなみに決算月の変更に関しては以下をご参考に。
事業年度変更の手順は以下の通り。
1.株主総会の特別決議
↓
2.定款の「事業年度」を変更したい事業年度に変更
↓
3.行政機関(税務署等)へ異動届出書を提出
少額減価償却資産の特例の特徴3.固定資産税
「少額減価償却資産の特例」によって経費計上した資産は、固定資産台帳に記載する必要があります。
全額償却するのは会計上の話であくまでも特例であるため、固定資産台帳に記載され、 かつ市町村等に申告することで固定資産税(都・市町村)の課税対象になります。
税額=(課税標準額-1,000円未満切捨て)×税率(1.4%)
※100円未満切捨て
ただし、償却資産の課税対象額が150万円未満の場合は課税免除になります。
少額減価償却資産の種類
最後に、おさらいとして少額減価償却資産の種類を押さえておきましょう。
少額減価償却資産|10万円未満の償却資産
少額減価償却資産は、個人事業主を含めたどのような規模の企業であっても取得価額を全額経費処理できます。固定資産台帳への記載の必要がなく、固定資産税(償却資産課税)対象外ということになります。
一括償却資産|20万円未満の償却資産
一括償却資産も対象企業に制限はなく、取得価額の全額または一部を3年間で均等に償却できます。当該期中の取得でも月割はせず、毎年3分の1ずつです。
こちらは固定資産台帳への記載の必要がありますが、市区町村に届け出る必要が無いため固定資産税対象外です。
少額減価償却資産の特例|30万円未満の償却資産
「少額減価償却資産の特例」によって処理した減価償却資産は、固定資産台帳への記載が必須で固定資産税の課税対象になります。
ただし、当該期の減価償却資産の合計額が150万円未満の場合には固定資産税は課税されません。
少額減価償却資産の特例と一括償却資産の特徴まとめ
「少額減価償却資産の特例」を活用すれば、単なる節税効果だけではなく、面倒な減価償却処理を軽減して会計書類もすっきりするため、経営の見通しが立てやすくなります。
たとえば、20万円未満の少額減価償却資産の場合、利益が出ていれば「少額減価償却資産の特例」を使った方が節税に繋がりやすくなりますが、利益が出ていなければ、一括償却を選択した方が決算書の見かけは良くなります。
また、決算時の明細書の添付や市区町村への償却資産の申告手続きが発生するため、使いどころが重要になるでしょう。
とはいえ「少額減価償却資産の特例」は、中小企業や個人事業主にとって節税に有利な制度です。減価償却資産を取得予定の社長はうまく活用する方法を考えてみてください。
なお、「少額減価償却資産の特例」には平成28年3月31日までという期限があります。
その後どうなるかは今のところわからないため、ご利用の際はお忘れなく。