利益を実際よりも過大に見せる粉飾決算。時々ニュースでも大規模かつ悪質な粉飾を行っていた事例を目にします。
実際、こうした違反によって倒産する企業の数は増加傾向にあり、他人事ではなくなってきています。
なぜ粉飾決済が見抜かれてしまうのか、また、どのような危険があるのか事例を取り上げながら解説していきます。
粉飾決算と逆粉飾決算
経営者として仕事をする上で、業績を「よく見せたい」と思ったことが一度はあるかもしれません。銀行からの信頼を含め、社会的信頼を得るために業績は良いように見せたくなる場面があるものです。
逆に、税金の支払いから逃れる目的で業績を「悪く見せたい」と思うケースもあるでしょう。利益を実際よりも過大に見せる決算を粉飾決算、逆に利益を過少に見せる決算を逆粉飾決算と呼びます。
粉飾決算を行っている会社は、銀行や株主からの信頼を一時的に得ることができるかもしれません。ただ、最終的に粉飾を行っていたという事実がばれてしまうと、信頼は失墜するのみ。逆粉飾決算についても然りで、いずれも経営者としてやってはならないことなのです。
偽りで塗り固めた決算はいずれバレてしまうもの。世間に知れたときには、もう会社の未来はないでしょう。嘘をつくことにエネルギーをかけるよりも、どうすれば経営状態が良くなるのかを考えた方が建設的といえますね。
粉飾決算による倒産事例
近年、コンプライアンス違反によって倒産する会社は増加傾向にあります。帝国データバンクが2016年に発表した資料によると、「2015年度コンプライアンス違反企業の倒産動向調査」の結果、倒産件数が前年度比3割増であり、過去最多を記録したとされている。
そもそもコンプライアンス違反とは、意図的な法令違反や規範・倫理に反する行為のことを指します。つまり、ここには粉飾をはじめとして、脱税や談合など、あらゆる法令違反が含まれています。こうした理由で倒産する企業が増えてきており、他人事ではなくなってきているのです。
実際にコンプライアンス違反によって倒産した会社の件数をグラフから見ていきましょう。
引用元:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p160402.pdf
2015年度のコンプライアンス違反倒産件数は289件。2006年の時点では102件しかなかった件数が、倍以上に増加しているのです。粉飾・脱税・談合・不正受給などに安易に手を染める事業者が増えてきているということができるでしょう。
また、違反の種別で倒産件数を見ていくと、次の表からは「粉飾」が最も多いことがわかります。
引用元:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p160402.pdf
具体的な事例を見ていくと、海外ブランド食材を輸入していた株式会社日食は2016年3月に破産。1990年1月期には、年間売上高が151億8800万円と大規模に事業を展開していました。ところが、近年は在庫負担や開店資金にお金がかかるようになり、債務が増大。取引金融機関は増大していましたが、粉飾決済をしていたことが判明し、信用が急激に低下してしまいました。
2017年には、格安海外旅行を手がける「てるみくらぶ」が負債151億円を抱えて倒産。観光庁・銀行など提出先に応じて決算書を複数作成していたともいわれています。そのような方法で粉飾決算を続けるうちに、負債が膨れ上がってしまったのです。
てるみくらぶから予約した旅行客は代金が支払われていないために飛行機に乗れない、宿泊できないなどの事態に直面しました。さらに、2017年度には新卒の社員50名の採用も決めており、倒産寸前には「現金一括入金キャンペーン」を行ってキャッシュを集めようとするなど、最後まで誤魔化そうとする姿勢が表れていました。
粉飾を続けても、最終的にはしわ寄せがきてしまい、取り返しのつかないことになってしまうのです。
粉飾決算はなぜ見抜かれるのか
てくみくらぶのように、数年にわたり粉飾決算の事実が明るみに出ないケースもあります。毎年決算しているはずなのに、なぜ粉飾がばれないのでしょうか。
いくつか考えられることはありますが、まず会計をチェックする機関が社内にあるはずです。そこも一緒になって事実を隠蔽していた可能性があります。
ただ、売掛け金が不自然に多い、在庫が大きく増減しているなど、明らかにおかしな点があれば経理のプロ・同業者から見ると違和感を感じることも多いのです。インターネットの普及により、個人で格安航空券やホテルを確保できるようになった今、旅行代理店では業績に伸び悩んでいることが一般的です。
そこで、あまりにも飛び抜けて業績が拡大している会社があればおかしいということになりますよね。
粉飾決算をしていることが見抜かれると、刑事責任・民事責任を問われることになります。
例えば銀行等に対する詐欺罪や、違法配当罪などが挙げられます。見抜かれるのは時間の問題であり、最後に待っているのはこうした責任ばかりであることを考えると、粉飾による本質的なメリットは何もないということになるのです。
粉飾決算のまとめ
粉飾が原因で倒産する会社も多いですが、会計を誤魔化しても根本的な解決にはなりません。現実的にプラスになることがない上に、場合によっては罪に問われる可能性もあります。
銀行や株主を欺くのではなく、正々堂々と経営を立て直していきたいところです。