この記事は、財務管理や会計も担っている少人数会社の社長に向けての情報です。
雇用保険によって、従業員への給付と会社側に支給されるものがあります。
まず、従業員への給付は、『分類すると基本手当と基本手当以外の給付』の2種類あります。基本手当は、会社を辞めた後失業者は次の仕事を探さないといけませんが、それに専念するために支給される手当のことです。この基本手当がないと、仕事探しよりも生活することを優先し、日雇いのバイトなどをしないといけない状況になり得ます。仕事探しが進まなくなることを懸念し、それを防ぐために支給されています。
また、雇用保険に加入していることによって、企業側に支給されるものは、『キャリアアップ助成金』『トライアル雇用支援金』があります。キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者に対して、企業内でのキャリアアップ等を実現することを目的に、非正社員からの正社員化、人材教育、藤堂条件改善等の施策を実施した企業に対して支援されるものです。
従業員と会社の両方に影響することなので、雇用保険料の計算も把握しておきましょう。
この記事の要点はこの3つ!
1.雇用保険とは
2.雇用保険の加入条件
3.雇用保険料の計算と雇用保険率の改定
では、さっそく見ていきましょう。
雇用保険とは
雇用保険は、従業員が失業した場合などに再就職までの生活をするために必要な資金を給付するためにあります。主なものは下記の通りです。
[雇用保険の種類]
・失業者給付(基本手当)
・求職者給付
・就職促進給付
・教育訓練給付
・雇用継続給付
失業者給付(基本手当)
雇用保険に加入していた労働者が失業した場合、失業後、求職活動を行っているしばらくの間、ハローワークから毎月一定額の給付金が出ます。
求職者給付
求職活動をしている人の安定した生活と、再就職をするために必要な技能習得の援助を目的にしているものになります。
就職促進給付
早期再就職の促進を目的とした、再就職、就業、就業促進定着等の手当が支給されるものです。
教育訓練給付
働いている人における主体的な能力開発の取組支援、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的にした給付です。
雇用継続給付
職業生活の円滑な継続の援助・促進することを目的とした高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付等の手当が支給されるものです。
雇用保険の加入条件
被保険者ごとに雇用保険加入の条件が異なります。
正社員の場合は、雇用保険適用事業所で働いている正規雇用された一般社員は、『必ず雇用保険に加入』しなければいけません。
非正規雇用者の場合は、1週間の労働時間が20時間以上で、継続して31日間雇用の見込みがあると条件を満たしたときに雇用保険に加入する義務があります。最初に雇用期間を定めていない場合や、途中から31日間以上の雇用に延長になったときも該当します。
季節労働者の場合は、1週間の労働時間が30時間以上になったら、雇用保険の「短期雇用特例被保険者」という分類に該当するようになります。
雇用保険料の計算と雇用保険率の改定
雇用保険料の計算式
毎月の給与(給与額または賞与額) × 雇用保険料率 = 雇用保険料
社会保険料は1年間保険料が変わらないのですが、雇用保険料は月の収入に応じた金額になります。なお、毎月の給与とは、税金や社会保険料などの控除前の金額の総額を指します。
また、雇用保険率の改定があり、平成29年 4月1日から平成30年3月31日までの雇用保険料率は以下の通りです。
まず、失業等給付の保険料率は、労働者負担・事業主負担ともに1,000分の1ずつ引き下がりました。事業主のみが負担する、雇用保険二事業の保険料率は、引き続き1,000分の3です。結果として、労働者負担は1,000分の3、事業主負担は1,000分の6になりました。
前述の計算において、1円未満の数字がある場合、原則は50銭以下は切り捨て、50銭超えは切り上げで処理しします。ただし、労使間で特約があるなどの例外パターンの場合は、1円未満は全て切り捨てるとルールを定めていたりと、会社側で自由に決められるケースもあります。
変更のタイミングも把握しておく必要があります
新しい雇用保険料率の適用は、支払の対象となる月がベースです。例えば、2018年1月に変更が行われた場合、1月分の給与から変更されることになります。たとえば、毎月30日締め、当月25日払いだった場合、1月25日に支払われた分は1月分の給与になるので、対象になります。翌月払いの場合は、2月25日払いになる分が1月分の給与になるので、この分から対象になります。前月分は古い雇用保険料率が適用されます。
雇用保険料率が改訂された場合、社員が給与明細を見ていつもと違うと感じることもあります。大きく雇用保険料が上がることはありませんが、いつもと違うことで不審に感じてしまうケースも考えられますので、雇用保険料率の改定があった場合は、明細を渡す前にきちんと社員に説明するように注意が必要です。その際に雇用保険料の計算式も伝えておくと社員本人が確認できますので安心です。