売掛と買掛とは?売掛金を残さない方法と時効の知識

売掛と買掛とは?売掛金を残さない方法と時効の知識

売掛金や買掛金って何?しっかり管理が必要な掛取引

売掛金や買掛金という言葉の意味をしっかりと理解していますか?

起業をして売上を積み重ねていくと増えていくのが、様々な入金サイトの管理やそれに伴う掛取引(売掛、買掛)。

売掛金の回収をうまく行うことが、安定した経営に繋がります。

今回は売掛金とは何か、買掛金とは何かといった基礎知識と発生した売掛金をうまく回収するルールなどを初めての方でもわかりやすく解説していきます。

売掛金とは

売掛金とは、先に商品などを納品して、後から支払いを行なってもらう取引に発生する債権のことを言います。つまり未収金のことです。

売掛金とは

未収金と言うとイメージは悪く感じる方もいるかもしれませんが、未収金が発生しないのは商品とお金を同時に交換する商売だけです。イメージしやすいのはレジでお金を払う小売業でしょう。

請求書を発行する請求方法は、入金されるまで全て売掛金になります。

売掛金は商品とその代金支払いにズレが生じた場合、貸借対照表では当座資産に記載されます。

売上に関する債権を売上債権と呼び、債権を手形で持っている場合は金銭を受取手形とし、そうでない場合は売掛金として扱います。

具体的な売掛金の例

例)
2月15日に納品した商品に対して、2月28日で締めて30,000円の請求書を発行した。代金が振り込まれるのは3月31日。
この場合、2月15日から3月31日までは30,000円は売掛金として扱われる。

売掛金の具体例

買掛金とは

買掛金とは、先に商品を納めてもらい、後から支払う取り引きを行った際に発生する債務のことを言います。つまり未払金のことです。

買掛金とは

未払金もイメージが悪いと感じる方もいるかもしれませんが、未収金と同様にレジでお金を払う小売業など以外は全て一時的な未払金が発生します。

商品が納品されると仕入債務(支払手形または買掛金)が発生し、代金を支払ったときに仕入債務は消滅します。

具体的な買掛金の例

例)
2月15日に納品された商品に対して、2月28日締め30,000円の請求書を受領した。商品代金を振り込むのは3月31日。
この場合、2月15日から3月31日までは30,000円は買掛金として扱われる。

買掛金の具体例

売掛金の時効

世の中には、商品購入後に請求書が発行され、売上の発生と金銭の支払いに一時的なズレがある商売が非常に多くあります。

掛取引を行わない商売は、主に飲食店・小売店などの現金商売や不動産売買などです。

そのため会社経営の観点で考えると、売掛金が消滅するまでの期間が短く、買掛金が消滅するまでの期間が長い方がキャッシュフローが良いということになります。

とは言え、思うように売掛金が消滅しない(=請求が支払われない)取り引きも出てくるでしょう。その場合に気をつけることは、「売掛金には時効が存在する」ということです。

売掛金には時効がある

犯罪などの時効と同様、支払うと約束した期日から一定期間が過ぎた場合、金銭の支払いを行わなくて良いことになってしまいます。

通常の商取引における売掛金の時効は5年です。ただし、時効年数は売掛金の種類によって異なります。

消滅時効が3年の売掛金

・システム制作料金やWEBサイト作成料金
・建設業者等の工事請負代金
・病院の診療代、薬剤費
など

消滅時効が2年の売掛金

・卸売、小売などの商品代金
・理髪店やクリーニングの代金
・学習塾や習い事の月謝
・弁護士報酬
など

消滅時効が1年の売掛金

・飲食店の飲食代金
・ホテルや旅館の宿泊料
・運送業者の運送代金
など

売掛金に対する時効の中断とは

上記参考通り売掛金の時効は意外と短いため、いつの間にか期限が過ぎてしまわないように気をつけなければいけません。

これに対して売掛金の時効を中断する方法もあります。時効の中断処理を行えば、時効期間を当初の年数に戻すことが可能です。

時効の中断を行うためには明確に裁判を行い、以下の4つのどれかに該当しなければいけません。

—–
1.裁判上の請求
・裁判上の請求(民法149条)
・支払督促の申立(民法150条)
・和解及び調停の申立(民法151条)

2.催告(民法153条)

3.差押え、仮差押え及び仮処分(民法154条)

4.債務者による債務の承認
—–

請求書を出していれば時効が中断されると思っている方もいますが、ここでいう請求とは裁判上の請求のことなので、訴訟を起こさないと時効は中断されません。

同様に、内容証明を出しただけでは時効は中断しません。内容証明を郵送し、6か月以内に訴訟を起こす必要があります。

売掛金回収のポイント1.契約書の締結はきっちり

売掛金を残したままにしないためにも、いくつかポイントを押さえておきましょう。

売掛金を作りやすいシチュエーションは最初の取り引きの際に、なあなあな関係を作ってしまうことです。

お金のやりとりに関して取引先との相互の確認が取れたら、次は契約書の締結時期を聞いておきましょう。

小額の取り引きの場合、取引先によっては、契約書を取り交わさずに仕事を進める場合があります。その場合は、最低限受発注書を交わしておきましょう。

業務内容、取扱商品、金額、支払日が記載された受発注書を交わしておかなければ、後から揉める可能性があります。

参考:
後から揉めないために取引先と確認する7つのルール

支払いには必ず優先順位があります。自分たちの売掛債権の優先順位を上げるためにも、妥協をしない取引関係を作るようにしましょう。

売掛金回収のポイント2.先払いの交渉をしてみる

いくら大きな売掛金があると言っても、売掛金の回収をめぐって裁判まで持ち込むことは嫌ですよね。

売掛金額が大きく心配な場合は、先払いの交渉をしてみることも検討しましょう。

商品の納品までに支払いを複数回に分けることが可能かどうかを聞いてみてください。

売掛金回収のポイント3.信用調査を利用する

大手は顧客との取り引きの際、信用調査会社の与信を通します。そしてリスクがありそうな取り引きは行いません。

参考:
企業信用調査とは?帝国データバンク評点に目安はあるか

中小企業の場合、とても魅力的に感じる取り引きであっても、長い間売掛を残されるダメージの方が遥かにきついでしょう。

顧客ごとに信用調査等を行って、与信枠を設定し合意しく必要があるかもしれません。この当たりの内容は、きちんと契約書にして、文書で残しましょう。

売掛金回収のポイント4.弁護士に依頼する

売掛金の回収が困難な場合は、なるべく早いタイミングで弁護士に依頼をします。

ズルズルと迷って最終的に弁護士に相談すると、自社へのダメージが大きくなってしまいます。

売掛の時効もあるため請求から半年などの期間を定め、回収できないものは全て弁護士に相談することで、請求にかかる手間を省きましょう。

まとめ

最後に今回の記事で紹介した内容をもう一度復習しておきましょう。

本記事のまとめ

いかがでしたでしょうか。会社の経営は非常にシビアなものです。

数字に強い社長が持つ能力の1つは、「売掛や買掛を徹底的に管理できること」だと私は考えます。

「大口の契約だから」「たくさんの契約の中の1つだから」という理由で代金回収業務を疎かにしてはいけません。

遠足は家に帰るまでが遠足。取り引きはお金の回収までが取り引きです。必ずルールを決め、しっかり回収をして、取引先と良い関係を築いていきたいですね。

取引先とのルールを決めることは非常に重要です。後から揉めないために色々なルールを決めておきましょう。

参考:
後から揉めないために取引先と確認する7つのルール

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