雇用するのは正社員、契約社員、パート、アルバイト?
さて、私は以前から、人の重要性、雇用の重要性を何度もお話してきました。これから雇用に向けて頑張るぞ、という社長もいらっしゃるでしょう。
さっそく、ハローワークに登録、求人誌にも情報を載せよう!と考える前に、どのような形態で人材を雇用するかを決めなければいけません。
雇用形態は大きく4つ、正社員、契約社員、パート、アルバイトがあります。当たり前ですが、どれも聞いたことがあり、何となく役割はわかっているはずです。
しかし、正社員、契約社員、パート、アルバイトがどのような権利や責任を持っているか明確にわかりますか?
また、私たちが誰かを雇用する際、どのように考えて雇用形態を選択すれば良いのでしょうか。
今回は、意外と知らない正社員、契約社員、パート、アルバイトの違いをお話したいと思います。
正社員、契約社員、パート、アルバイトに共通すること
まず、各雇用形態の特徴を見る前に、全ての雇用形態の基本的な共通事項を確認しましょう。
雇用形態の共通事項1.最低賃金の厳守
まずは、最低賃金の厳守です。最低賃金は、最低賃金制度によって定められており、雇用形態に合わせて、時給制、日給制、月給制があります。
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低額を定め、雇用者は最低賃金額以上の賃金を被雇用者に支払わなければならない制度のことです。以下のように考えます。
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時給制の場合:時給 ≧ 各都道府県の最低賃金時間額
日給制の場合:日給 ÷ 1日の労働時間 ≧ 各都道府県の最低賃金時間額
月給制の場合:月給 ÷ 1か月の平均所得労働時間 ≧ 各都道府県の最低賃金時間額
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参考:
最低賃金制度 |厚生労働省
最低賃金は、労働基準監督署によって管理されています。
雇用形態の共通事項2.労働時間の厳守
労働時間は休憩時間を除き、原則「1日8時間、かつ1週間40時間まで」と決められています。
また、労働時間が1日6時間を超える場合は、被雇用者に45分以上の休憩を与えることが義務付けられています。
休日は少なくとも週に1日、または4週間通じて4日の休日の確保が雇用者の義務です。
雇用形態の共通事項3.有給休暇
雇用後6か月間で出勤率が8割以上の場合、10日間の年次有給休暇を与えるのが雇用者の義務です。
年次有給休暇は、勤続期間によって以下のように与えられる日数が変わります。
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・半年の勤続期間…年換算で10日以上の有給休暇
・1年半の勤続期間…年換算で11日以上の有給休暇
・2年半の勤続期間…年換算で12日以上の有給休暇
・3年半の勤続期間…年換算で14日以上の有給休暇
・4年半の勤続期間…年換算で16日以上の有給休暇
・5年半の勤続期間…年換算で18日以上の有給休暇
・6年半~の勤続期間…年換算で20日以上の有給休暇
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雇用形態の共通事項4.時間外労働(残業)
時間外労働や休日労働は原則禁止されています。
ただし、予め会社が36(さぶろく)協定を労働基準監督署に届け出ていれば、業務上の「やむを得ない場合に限り」ということで、認められます。
雇用者に時間外労働をさせた場合は、1時間当たりの賃金額に対する以下の割増料金を支払わなければいけません。
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・時間外労働…2割5分以上(1か月60時間を超える時間外労働については5割以上)
・休日労働…3割5分以上
・深夜労働…2割5分以上
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正社員
正社員とは、雇用契約上で、特別の取り決めがない雇用形態のことで、雇用期間の定めがなく、解雇が厳しく制限されていることが特徴です。
そのため雇用者は、将来に渡って被雇用者の働く権利を守り、会社の基盤を担っていく人材になるべく教育していかなければいけません。
ただし、業務遂行に関しては一定の責任を負い、業務命令に従うことが原則で、転勤や部署異動など本人の意にそぐわない場合でも従うことが求められます。
もちろん、36協定の範囲での残業も義務付けられています。
正社員の手当
賃金とセットのイメージがある手当ですが、基本的には時間外労働手当を除き会社は手当を用意する義務はありません。
ちなみに、主な手当は以下のとおりです。
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扶養手当…被雇用者に、被扶養者がいる場合に支給される手当です。
通勤手当…通勤時に発生する通勤代を会社が支給する手当です。
地域手当…会社が複数地ある場合、物価の差を考慮して支給される手当です。
住居手当…被雇用者の住居費用に対する補助的な手当です。
役職手当…管理職など一定の役職に対して支給される手当です。
資格手当…高度資格を所有している被雇用者に対して支給される手当です。
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正社員の社会保険
正社員の場合は、社会保険の加入は会社の義務になります。社会保険に関しては、以下を参考にしてください。
参考:
会社負担は社員給与の15%!社会保険料シミュレーション
契約社員
契約社員とは、雇用契約上で、雇用期間の定めを設けた被雇用者のことを言います。
本来、契約社員は、専門的なエンジニアや優れたデザイナーなど、高度な専門能力を持つ人が有する雇用形態でした。
そのため、賃金も正社員より高く、契約条件によっては、正社員よりも労働の定義を優遇されることが多かったのです。
しかし現在ではスキルに関係なく、労働者に対して単純な雇用期間が設けられた契約であるため、会社にとっては雇用のリスクヘッジの側面が強く、一部社会問題化しています。
契約社員の手当
契約社員も、正社員と同様、または正社員よりも優遇されることはないため、多くの場合は支給される手当に差はありません。
契約社員の社会保険
契約社員の社会保険の加入条件は、以下の通り労働基準法で定められています。
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・正社員の3/4以上の勤務時間を有する者
・1か月の勤務日数が正社員の3/4以上である者
・契約期間が2か月以上の者
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すべてに該当する契約社員は、社会保険への加入が義務化されています。
パート・アルバイト
パート(正式にはパートタイム労働者)とアルバイトとは、働く時間・日時を自由に選んで仕事ができる雇用形態のことです。
多くの場合、未経験者でも働ける環境が多いため、時間制限がある人が働くには適していますが、スキルアップをして正社員登用へのステップアップを目的とする雇用形態ではありません。
雇用者側もパート・アルバイトを部分的な仕事を行う労働者として扱い、パート・アルバイトもフルタイムで会社に縛られずに働くことを目的とする人が多いことが特徴です。
パートとアルバイトの違い
パートとアルバイトには、法律的に明確な違いはありません。
パートタイムはフルタイムの対義語なので、本来はアルバイトもパートタイムの中に含まれます。
ちなみにアルバイトは、明治時代に大学生がドイツ語で「働く」という意味のアルバイトを使ったのがはじまりなため、現在日本で使われているアルバイトという言葉は主に学生に用いられます。
パート・アルバイトの手当
パート・アルバイトが期待できる手当は、一般的には通勤手当と一定条件を満たした有給手当です。パート・アルバイトが有給休暇を取得するためには以下の条件が必要になります。
有給休暇のパターン1.
6か月以上勤続していて、労働日の8割以上出社、週の労働日が5日以上、かつ週の労働時間が30時間を超える人は、無条件で正社員と同じだけの10日の有給がもらえます。
有給休暇のパターン2.
6か月以上勤続しているが、週の労働日が4日以下、かつ週の労働時間が30時間以下の人は、日数は少なくなりますが、有給休暇が取れます。
例えば、週所定労働日数が1日、1年間の所定労働日数が48日から72日で6か月以上継続勤務した場合は1日、1年6か月から3年6か月の場合は2日間となります。
パート・アルバイトの社会保険
パート・アルバイトの社会保険の加入条件は、以下の通り労働基準法で定められています。
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・正社員の3/4以上の勤務時間を有する者
・1か月の勤務日数が正社員の3/4以上である者
・契約期間が2か月以上の者
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すべてに該当する場合、パート・アルバイトであっても社会保険への加入が義務化されています。
正社員、契約社員、パート、アルバイトの違いまとめ
会社を営していると、いつでも人材が必要だと考えます。そのため、人を雇用する準備は常にしておかなければいけません。
ただし、どのように働いて欲しいのかによって雇用形態は変わります。
例えば、単純作業や期間がある程度決まっている作業をお願いする場合は、パート・アルバイトが適しているでしょう。
多くの場合、パート・アルバイトは求められることだけをこなす考え方で仕事を行いますし、会社に必要以上に縛られたいとは思っていません。※もちろん人によります
また、期間が決まっている作業で、責任をともうなう仕事、スキルを伴う仕事であれば契約社員が良いでしょう。
昨今の風潮では、契約社員での登用が悪いことのように扱われていますが、これは根本の制度自体を変えていかなければいけないお話だと思います。
もちろん、折り合いがつかないため社会問題になってしまっているわけですが。
私は、雇用形態はなるべく正社員方が良いと思っているタイプです。ただし、仕事内容や期間によってはそう思えない事情もあるため、雇用形態に応じてうまく使い分ける必要があります。
また、パート、アルバイト、契約社員、どの雇用形態で人を採用するにしても、人選は非常に重要です。
彼らが今後もこの会社で働きたいと思っているのか、それとも一時的に働きたいだけなのかを見極め、時には話をし、彼らが望む方向に舵を切れるようにしてあげることも必要です。
雇用の準備はとても重要です。また、採用時の見極めも重要です。以下を参考に、みんながハッピーになれるような採用を行いましょう。