- 1. スムーズな経営には銀行評価が大切
- 2. 銀行が融資したい決算書1.自己資本比率が高い
- 3. 銀行が融資したい決算書2.フリーキャッシュフローが多い
- 4. 銀行が融資したい決算書3.税金を払っている企業
- 5. 銀行が融資したい決算書4.保有不動産に担保余力がある
- 6. 銀行が融資したい決算書5.土地・投資有価証券に含み損がない
- 7. 銀行が融資したい決算書6.固定資産が現金化できる可能性がある
- 8. 銀行が融資したい決算書7.累積欠損でも社長に個人資産がある
- 9. 銀行が融資したい決算書8.仮払金、立替金、仮受金、預り金が少ない
- 10. 銀行が融資したい決算書9.貸付金がない
- 11. 銀行が融資したい決算書10.売掛金が少ない
- 12. 銀行が融資したい決算書11.月次の勘定科目内訳書がある
- 13. 銀行が融資したい決算書12.棚卸資産の金額が妥当
- 14. 銀行が融資したくなる決算書項目まとめ
スムーズな経営には銀行評価が大切
会社がスムーズな経営をしていくためには、最適なタイミングで最適な借入を行う必要があります。
もちろん、目的がなく借入を受けてはいけませんし、理由もなく金融機関からの融資を受けてはいけません。まずは、借入を行う目的を明確にしましょう。
融資の目的1.次の事業展開を生む固定資産を買うための融資
融資の目的2.会社の成長スピードを補う時間を買うための融資
融資の目的3.仕入などにスケールメリットを設けるための融資
融資の目的4.将来に備えて返済実績を作るための融資
融資の目的5.乗り切りたい最後の切り札となる運転資金融資
目的が明確なり、いざ融資を受けたい場合、その候補先は銀行(金融機関)・保証協会・日本政策金融公庫の3つがメインになるでしょう。
3つの違いは以下を参考にしてください。
一般的に、起業をした会社が融資を受ける順番は、日本政策金融公庫、保証協会、銀行(金融機関)ですが、会社経営を始めてしばらく経つと、銀行(金融機関)が資金調達のメイン機関になります。
つまり、経営を続けるほど銀行との結びつきが強くなるのです。そこで重要なことは、如何に銀行の信頼を勝ち取るかです。
銀行の信頼を勝ち取るためのファーストステージは、とにかく良い決算書を作ること!
決算書の出来が良ければ、銀行は融資したくなりますし、その逆であれば……。
では、どのような決算書であれば銀行は融資したくなるのでしょうか。銀行が思わず融資したくなる決算書のポイントをご紹介します。
銀行が融資したい決算書1.自己資本比率が高い
銀行が決算書で最初に見る、もっとも重要な項目が自己資本比率です。他人資本(借入など外部から調達した資本)に依存していない企業体質であれば、銀行評価は高くなります。
業種によって平均値は変わるので一概には言えませんが、一般的に自己資本比率が50%を超えていると倒産リスクがほぼ無い超優良企業とされ、40%以上だと倒産リスクの少ない優良企業だと判断されます。ちなみに中小企業だと15%前後が自己資本比率の平均と言われています。
自己資本比率がマイナスの場合を債務超過と言い、債務超過の企業は融資を受けにくくなります。
資金繰りが厳しくて、さらに借入をしないと経営できない多重債務の会社には、新しい借入金を返済する余裕はありません。
銀行が融資したい決算書2.フリーキャッシュフローが多い
キャッシュフロー計算書を見て、フリーキャッシュフローが多い会社であれば借入金の返済が可能です。返済原資が明らかであれば、銀行評価は高まります。
ちなみにフリーキャッシュフローとは以下の指標のことを言います。
フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足したものです。
フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー
つまり、以下のキャッシュを表しています。
「販売や仕入などの営業活動をして手元に残ったキャッシュから、事業継続に必要な設備費用を支払ったキャッシュの残り」
フリーキャッシュフローは借入などの財務活動で得たキャッシュを含まないため、その会社が純粋な営業活動でキャッシュをどれだけ作ることができるかという能力を測る指標だと言えます。
また、フリーキャッシュフローが潤沢であるかは、自由資金比率であらわします。自由資金比率とは、利益がキャッシュとして手元に残りやすい体質かどうかを示す指標です。
自由資金比率の計算方法と目指すべき自由資金比率は以下を参考に。
営業キャッシュフローが900万円、投資キャッシュフローが600万円、利益剰余金が1,200万円の会社の場合、
300万円÷1,200万円×100=25%
※フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー-投資キャッシュフローが自由資金比率となります。ちなみに一般的には、自由資金比率は以下の数値で会社の安定性を判断します。
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理想的な企業:~100%
優秀な企業:70~99%
安定した企業:40~69%
対策を考えるべき企業:20~39%
すぐに改善が必要な企業:19%以下
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銀行が融資したい決算書3.税金を払っている企業
当たり前ですが、遅滞なく税金を払っている企業でなければ、融資を受けることは難しいでしょう。社会保険料や消費税なども延滞してはいけません。
間違っても、融資を受けられれば税金が払えるという理由付けはしないよう。この発言は銀行の信用を一気に落とします。
企業が支払う基本的な税金は、以下を参考に時期も合わせて押さえておきましょう。
銀行が融資したい決算書4.保有不動産に担保余力がある
会社もしくは社長が保有している不動産に担保余力があれば、融資を受けやすくなります。
ただし、抵当権設定ではなく、根抵当権設定をされるでしょうが。
根抵当権とは、不動産などを担保とした不特定の債権に極度額を設定した担保物権のことです。これに対し、通常の抵当権は特定の債権を被担保債権にすることです。
「乙区」には以下の様に、抵当権、根抵当権、賃借権などが記載(登記)されます。
—–
1.債権の額(当初借りたお金の金額)
2.債権者の住所・氏名(お金を貸した人・金融機関)
3.債務者の住所・氏名(お金を借りた人・通常は不動産の所有者)
—–
ちなみに極度額とは、融資金額の利用上限のことを指します。
例えば、会社が1000万円の融資を受けたい場合、社長が持っている土地を担保にするとします。調査してみると土地には2000万円の担保価値があることがわかりました。
そこで、銀行は極度額を2000万円と設定して、まず1000万円を融資します。この行為は、その会社の信用枠を押さえてしまうという行為です。
根抵当権を設定することで、その会社が当該担保による他の借入を行うことを防ぎます。
※長くなるので、詳細は不動産会社の方か銀行担当者に聞いてください
銀行が融資したい決算書5.土地・投資有価証券に含み損がない
企業が土地・有価証券を所有している場合、含み損があるとリスキーな投資を行ったと判断される可能性があります。
含み損とは、土地や有価証券が取得原価に対して値下がりし、今売却すれば損益が出てしまう状態のことです。
ただし、含み損があったとしても評価額自体が高ければ担保価値があると判断されるため、融資は行われやすくなるでしょう。
※不動産であれば、謄本の乙区記載内容によります
銀行が融資したい決算書6.固定資産が現金化できる可能性がある
通常1年以内に現金化できない資産は、固定資産として仕訳されます。
ただ、その中でも早期に現金化しやすいものや、ある程度の減価償却期間が過ぎても市場価値が高い固定資産であれば、銀行評価が高い可能性があります。
たとえば、中古でのニーズが高い産業機械、今後伸びしろのある特許権や商標権、またはすでに買い付け申請がされた土地・建物などです。これらは業界の市場動向も加味したうえで、評価に組み込まれます。
銀行が融資したい決算書7.累積欠損でも社長に個人資産がある
会社の融資に対して、社長は保証人になります。そのため、決算書に累積欠損があっても、社長に一定の個人資産があれば融資が行われやすくなります。
一番わかり易いものは不動産などの担保物件ですが、次は役員報酬額です。
もちろん会社の売上、利益に対して妥当な報酬額であり、かつ長期に渡って継続的に資産形成してくれる報酬額であると判断されなければいけません。
銀行が融資したい決算書8.仮払金、立替金、仮受金、預り金が少ない
仮払金、立替金、仮受金、預り金はそれぞれ意味が違いますが、どれも現時点では最終的な処理項目が決まっていない仕訳項目のことです。つまり、外部から見ると使途不明金に見えても仕方がないものです。
仮払金、立替金、仮受金、預り金が少ない決算書は、堅実な経営を行っている証明の1つになります。
銀行が融資したい決算書9.貸付金がない
融資を受けたいにもかかわらず、貸付金があることはマイナス評価になります。「まず先にそれを回収しろ!」ということです。
中小企業によくある貸付金のパターンは、社長に対して貸し付けている役員貸付金です。以下から、役員貸付金の特性と解消方法をしっかりと押さえておきましょう。
参考:
役員貸付金と役員借入金の違いとメリットデメリットの解説
融資審査に影響する役員貸付金5つの解消方法
銀行が融資したい決算書10.売掛金が少ない
例え100万円の契約書を結んでいても、商売上の納品が完了していても、入金があるまでは100万円は売掛金で仕訳られます。
店舗などの現金商売でない限り、決算時に売掛金があるのは当たり前です。また、顧客の支払いサイトによっては、売掛金の回収まで時間がかかる場合があるでしょう。
そこも加味した上で、極力売掛金を減らすことができていると認められれば銀行評価は上がります。
銀行は(地元の)メジャーな会社であれば、支払いサイトをある程度把握していますし、業種業態による支払いサイトの目安も持っています。
社長の交渉によって支払いサイトが短く調整されており、かつ売掛金が少ないことが評価対象です。
数字に強い社長が持つ能力の1つは、「売掛や買掛を徹底的に管理できること」だと私は考えます。
「大口の契約だから」「たくさんの契約の中の1つだから」という理由で代金回収業務を疎かにしてはいけません。
銀行が融資したい決算書11.月次の勘定科目内訳書がある
勘定科目内訳書とは法人税申告書に添付しなければならない決算書類の一つで、決算書の主要な勘定科目ごとの詳細を記載した書類のことです。
勘定科目内訳書があれば入出金の詳細が明らかになるため、決算書のごまかしが難しくなります。
銀行に融資を依頼した際、前3期分の決算書類とともに月次の勘定科目内訳書があるかを尋ねられる場合があります。
月次の勘定科目内訳書があるということは、決算時に帳尻合わせをすることが(少)ないという意思表示になるため、銀行評価にもつながります。
銀行が融資したい決算書12.棚卸資産の金額が妥当
売上に対して過剰在庫を抱えてしまっていると、在庫は棚卸資産になり、銀行評価は悪くなります。理由はまた別途お伝えするとして、棚卸資産の中身は以下のものになります。
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1.商品・製品
2.半製品
3.仕掛品
4.原材料
5.貯蔵品
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これから加工をするための在庫(2~5)の場合、受注が決まっているにもかかわらず、製造が仕掛り、または製造前ということもありえます。
銀行はこの辺りの判断もできるので、やはり業種業態によって棚卸資産の目安は変わりますし、評価も変わります。
銀行が融資したくなる決算書項目まとめ
細かい項目をあげていくとまだ注目ポイントはありますし、業種業態やその時の企業の業績、市場動向によっても決算書の見方は変わります。
まず自社の決算書がどのような業種特性か理解しておく必要があるため、決算書は絶えず読まなければいけません。わからないことは税理士に説明してもらいましょう。
決算書の読み方を理解できれば、それだけ銀行評価を高める準備ができます。顧問税理士には必ず月次訪問と月次決算を依頼し、日頃から数字に強くなる努力をしておいてください。