キャッシュフローが悪化してしまったら
「あれ?来月キャッシュやばいかも……。」
まぁ、よくある話です。会社経営は常にキャッシュフローとの戦いです。
経営には良い時期と悪い時期の波があり、いくら良い時期が続いても、悪い波が来れば、一発で飲み込まれてしまうこともあります。
もちろん前もって資金調達できることが最善なのですが、そこをコントロールすることは至難の技です。社長であれば、前もって色々な波に対応できるように心の準備と対応方法を知っておくべきでしょう。
そこで今日は、もし仮に顧客請求、税金、社員給与、社会保険料などの支払いが難しい局面に遭遇した場合、どう対処すれば良いかをお話したいと思います。
基本は顧問税理士に相談
基本は顧問税理士に相談して、今の状況を伝えることから始めましょう。
単純にキャッシュフローが良くないと言っても原因は様々です。キャッシュフロー悪化の原因によって取るべき対策も異なります。
まずはキャッシュフローが良くない状況と原因をしっかり把握しましょう。
現状把握によってわかる以下の3つの経済状況を認識してください。
経済状況1.今の時期だけキャッシュフローが厳しい
季節要因、設備投資、人員増加、支払いサイトが長い仕事を受けている、などによって起こります。
経済状況2.徐々にキャッシュフローが悪化…見通しも立ちづらい
経営環境の悪化、業績不振などによって起こります。
経済状況3.突然の出来事でキャッシュフローが一気に悪化
震災、金融危機、社員の離反、訴訟などによって起こります。
では、これらの経済状況に対して、社長はどのような索を講じれば良いのでしょうか。
支払いが厳しい時の対応方法1.新たな資金調達方法を模索する
上記の内容によっては、問題なく資金調達をできる場合があります。
まずは基本となる資金調達方法から何が選択できるかを検討しましょう。
上記記事でもお伝えしている助成金・補助金は資金調達までの足は長くなりますが、良いキャッシュフローを作るためには、”今”の対策だけを行っても次の悪い波に飲み込まれてしまいます。
必ず”今”と”近い将来”の2つの対策を行い、長期的に安定経営に戻せる対応をしていきましょう。
支払いが厳しい時の対応方法2.資金調達以外のキャッシュ確保を図る
資金調達以外でキャッシュフローの改善を図ります。こういう時だからこそ、根本から見直しをすると良いでしょう。
キャッシュフロー計算書を見直し、営業キャッシュフローのプラスを大きくする方法=短期改善、投資キャッシュフローのプラスを大きくする方法=長期改善ができるかを探りましょう。
参考:
営業・財務・投資を8分で理解するキャッシュフロー計算書の見方
キャッシュ確保手段1.外注先との交渉
外注先に相談して、支払いサイトを長くしてもらう交渉をしましょう。このような相談は、商売をしていると双方によくある話です。お金の話を躊躇しないでください。
例えば、月末締めの翌月末払いだったものを月末締めの翌々月払いにしてもらったり、今ある支払いを分割にしてもらうなどの交渉です。
もう一度言いますが、躊躇せずにしっかり事情を話して交渉してください。商売が薄い時期、厚い時期は誰しもあることなので、恥ずかしい話ではありません。
キャッシュ確保手段2.仕入先との交渉
これは外注先と同様です。仕入は外注と違って、これから物を仕入れ、お金を払うという流れになるので、しっかりと事情を話した上で、どれ位の期間相談に乗ってもらうかを話し合いによって決められるようにしましょう。
キャッシュ確保手段3.請求(売掛金)の回収交渉
こちらも交渉してみるのは手でしょう。事情は違いますが、売掛金の早期回収相談は何度かしたことがあり、可能な限りということで応じていただいたこともあります。
キャッシュ確保手段4.経費削減
諸経費が削減できないかを必ず見直してください。キャッシュフローが悪い時期が、どれ位続くかは明確にはわかりません。そのため、数万円でも今から経費削減をすれば、継続的にキャッシュフローの改善に繋がります。
キャッシュ確保手段5.資産の売却
決算書(月次決算書)を見て、資産計上されている資産の売却を検討しましょう。勝負どころでスリム化できるかどうかが今後の経営の分かれ道になります。
キャッシュ確保手段6.請求形態の変更
商品販売では難しいですが、製造業などにおいては着手金をもらう請求形態を採用してもよいでしょう。
上記の他、以下もご参考に。
参考:
普段の意識でキャッシュショートの心配なし!資金繰り改善13箇条
支払いが厳しい時の対応方法3.それでもどうにもならない場合
上記2つの対応策をとってもどうにもならない場合もあるでしょう。その場合はどうしたら良いのでしょうか。
誰に対して、どのような支払いが遅れる場合も、以下の「どうにもならない場合の基本3か条」は必ず守ってください。
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支払いがどうにもならない場合の基本3か条
1.状況の把握
2.税理士との対応策相談
3.事前の話し合い
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この基本3か条を守った上で、以下の条件に対処していきます。
各種税金や社会保険料の場合
実は一番厳しいのが国、都道府県、市町村に納める税金や社会保険料です。
同じ公共機関でも対応が違います。時期によっても違うので注意してください。
事前に滞納しそうだとわかった場合は、顧問税理士に相談して、対応策を話しあってから、納税期限よりも前に各税金の担当者に事情を説明しましょう。
場合によっては納付の分割やその他の解決策に至ることがあります。
しっかりとした「状況の把握」、「税理士との対応策相談」、「税金担当者への事前の通知」、この3つを怠ってしまった会社の倒産、事業廃止はいくつも見ています。
せっかく作った会社を事業以外の理由で潰してしまわないように気をつけましょう。
外部への支払いの場合
信用を落としかねないのが、外注や仕入先への支払い遅れです。
こちらも対応方法は同じですが、支払い遅れの通達は早ければ早い方が、先方も何らかの対応策を取れます。
どうなるかわからない場合でも、キャッシュが厳しいから相談させてもらうかも知れないことくらいは、かなり前もって伝えておくべきでしょう。
社員の給料の場合
これは……、普段の業務への向き合い方と社長への信頼によって、対応策と反応は大きく違うと思います。
一部でも良いので支払いをして、頭を下げるのが一般的でしょうか。
社員の士気を下げるため事前に言いたくないという気持ちはわかります。
一度に全員に伝えるのではなく、意識が近い責任者から順番に伝えて、状況を常に共有するようにしましょう。
税金…社会保険…請求…給与…払えない時の対応方法まとめ
何だか考えただけでも気分が重くなってしまいますが、会社の業績が良い時期ほど、キャッシュフローが悪くなることを見越した対応策を練っておくべきです。
冒頭でお伝えした現状把握でわかるの3つの経済状況ですが、1→2→3の順番に経済状況は悪化します。
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1.今の時期だけキャッシュフローが厳しい
→キャッシュフロー計算書を見直して、改善時期がいつ頃かを把握しましょう。
2.徐々にキャッシュフローが厳しくなってきて今後の見通しも立ちづらい
→経費削減できるところがないか、また営業手法の見直しなどを行いましょう。
3.突然の出来事でキャッシュフローが一気に悪くなった
→すぐに使える公的制度や融資、固定資産の現金化などを考えましょう。
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簡単に対応策を書くと上記のようになりますが、基本は「状況の把握」、「税理士との対応策相談」、「事前の通知」です。
これを怠ってしまった時点で、仮に一時的に危機を乗り越えても、信用出来ない社長、信用出来ない会社というレッテルが貼られてしまうでしょう。
このような状況に陥らないためにも、普段から準備をし、いざ経済状況が悪化した際に冷静に対応できるようにしておいてください。