労働時間の管理には時間もコストもかかりますが、向き合っていかなければならない課題です。
昨今、長時間労働による過労死や過労自殺の問題がフォーカスされています。
経営者・事業主として人を雇用する立場にある人は、他人事と思わずに責任を持って未然に防ぐ取り組みをしていく必要があります。
過労死・過労自殺の現状
近年、過労死・過労自殺の件数は横ばいで、社会的にも問題視されている中でなかなか減少してきていないことが実情です。
経営者・事業主として、従業員を守っていくことも仕事のうち。過労死や過労自殺の現状に目を向けることも大切なのです。
厚生労働省の資料をもとに作られた次のグラフでは、過労死・過労自殺の件数を表しています。
青が過労死、赤が過労自殺、縦軸が人数を示しています。
このグラフが示す通り、2006年〜2015年までの10年間で過労死・過労自殺の件数は減っていません。
この10年間で4,615人の命が奪われています。
こうして数字だけ見るとどれだけ多いのか実感がわかない方もいるかもしれませんが、毎日1人以上が過労によって命を落としているというといかに深刻な問題であるかがわかると思います。
20代・30代では過労死よりも過労自殺が多く、40代以降では逆に過労死の割合が多くなるともいわれています。
そうした違いはありますが、いずれも心身に相当な負担があったということは事実でしょう。
古くからの日本の働き方を変えようとする動きもありますが、まだ長時間労働やサービス残業といった文化は根強く残っていることが実情です。
「これまでもそうやってきた」という時代遅れの理由はもはや通用せず、社会全体で働き方を見直していく必要があるのです。
経営者・事業主の方はこれまでに従業員のワークライフバランスについて真剣に考えたことがあるでしょうか?
従業員に長時間労働を強いている経営者がいればすぐにでも対策を練るべきですが、休暇の取りやすさやハラスメントが横行していないかなど注視すべきポイントは多々あります。
自ら進んで残業する従業員の過労死
多くの場合、経営者として「過酷な労働を強いたくない」という思いは当然あるでしょう。
仮に長時間労働を強いる経営者がいれば、そのときは責任が問われることになります。
ただ、自ら進んで残業する従業員が過労死した場合、責任の所在はどこにあるのでしょうか?
店長などの管理者は、経営者が強要せずとも率先して残業することがあります。
このような場合でも、経営者としては他人事ではなく、管理の問題が問われてくるのです。
実際にあった判決では、会社側がタイムカードのチェックを行って、長時間労働の実態を認識していたのに対応をしなかったということから責任があると判断されたケースがあります。
この判決では本人の自己管理にも問題があったと指摘していますが、経営者の管理が不十分であったということになるのです。
責任をどのようにとっても、過労死・過労自殺してしまった従業員は戻ってきません。
経営者として責任を免れるという目的ではなく、「会社と従業員を守る」ためにも対策は必須です。
少なくとも、会社の従業員の労働時間は定期的にチェックして、必要があれば業務内容や人員の配置を見直す必要があるでしょう。
業務の効率化に向けて動く
経営者として長時間労働を回避するためには、業務の効率化を実現するべくアクションを起こすことが挙げられます。
業務の非効率性は、残業を含む長時間労働を招いてしまいますし、経営的な面でも人件費がかさむ・生産性が低下するなどデメリットしかないことになります。
短い労働時間で効率的に仕事をこなすことが可能になれば、労働者にとっても、経営者にとってもプラスになるのです。
従来の慣習をそのまま引き継いで行っている業務も、無駄な工程は最大限効率化していくことが必要になります。
例えば、経理の面ではクラウド会計で手作業による情報の入力をなくし給与計算を簡単な操作で行えるようになると、それだけでも負担は大きく軽減できます。
経理を担う事務職員に、より必要性のある仕事を任せられるようになるでしょう。
そのほか、簡単にできることとしては部署間でスケジュールなどの情報をオンラインでシェアできるような仕組みを導入することも有効です。
小さな会社であれば、googleで提供しているカレンダーのサービスなどでも十分対応できるでしょう。
会議・ミーティングの日程調整も従来はメールや電話で行っていたかもしれませんが、参加者がオンラインで出欠可能な日時を入力するだけで簡単に日程を調整できるサービスも出てきています。
業務の中には、細かなことであっても「無駄」がたくさんあるのです。
こうした無駄を可能な限り省く工夫をすることで、労働時間の減少を実現できるとともにより本質的な意味でビジネスの発展につながっていくでしょう。
まとめ
過労死・過労自殺の問題は他人事ではなく、経営サイドにいる人が真剣に対策していかなければならないことです。
従来のやり方にこだわらず、業務の効率化を図るための工夫をすることで、労働時間の短縮・生産性の向上に結びつきます。