決算書は誰が何のために使う?
決算書は誰がどのように使うものなのか知っていますか?
社長が経営判断するため……というのは当たり前で、その他にもあなたの会社の決算書を見たい方が存在します。
決算書の正式名称は財務諸表ですが、日本の会計基準では、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・キャッシュフロー計算書(C/S)・株主資本等変動計算書(S/S)のことを指します。
決算書を見たい方はこれらすべての書類を必要とするわけではなく、貸借対照表だけ見たい方、損益計算書だけ必要な方もいるでしょう。
もちろん、決算書を必要とする方の最終目的はさまざまですが、その会社の経営状態を判断したいということは共通です。
では、あなたの会社の決算書を見る方は一体何が目的で経営状態を判断したいのでしょうか。
決算書を見たい人1.経営者
まずは社長であるあたなや経営陣が決算書を見なければいけません。
経営者が決算書を見る目的は、現在のキャッシュフロー、事業の効率性、コスト割合などを見て、将来の経営判断をするためです。
もちろん起業したばかりの頃は、決算書を見て一喜一憂するだけのことも多いでしょう。
経営にこなれてくると、現状を把握するために貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書などを見て次の経営の方向性を決めたり、修正したりを瞬時に行えるようになります。
また、決算書は自分の予測が正しかったかを測る通信簿のような意味合いで見ることになります。予定と実績の乖離が少ないほど、次の一手の判断に自信が持てるでしょう。
決算書を見たい人2.税理士
税理士は全ての決算書を見て、記載ミスや仕訳ミスがないかを調べ、正しい決算書を作ることを目的とします。
正しい決算書を作るためには通期を通した道筋があり、日次、月次で軌道修正が必要です。優秀な税理士は、軌道修正が可能な内容を発見し、経営計画のアドバイスを行います。
税理士は社長の最大のパートナーであるべきです。良い税理士選びのポイントは以下を参考に。
税理士の選び方ポイント1.質問の回答が早いか、回答が一生懸命か
税理士の選び方ポイント2.偉そうな態度を取っていないか
税理士の選び方ポイント3.サービス提供している感覚を持っているか
税理士の選び方ポイント4.組織運営している感覚を持っているか
税理士の選び方ポイント5.料金説明、サービス説明をしっかりするか
税理士の選び方ポイント6.月に何度かの訪問をしてくれるか
税理士の選び方ポイント7.節税に関する知見をしっかり持っているか
税理士の選び方ポイント8.資金調達の知識を持っているか
税理士の選び方ポイント9.的確な役員報酬のアドバイスをくれるか
税理士の選び方ポイント10.月次決算を行ってくれるか
税理士の選び方ポイント11.税務署に強いかどうか
税理士の選び方ポイント12.新人教習の場に使われないか
決算書を見たい人3.金融機関
金融機関は、その会社に対する融資基準の1つとして財務3表(貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・キャッシュフロー計算書(C/S))を見ます。
銀行が決算書を見る際にどのような箇所を見て評価をしているかは、以下を参考にしてください。
銀行が融資したい決算書1.自己資本比率が高い
銀行が融資したい決算書2.フリーキャッシュフローが多い
銀行が融資したい決算書3.税金を払っている企業
銀行が融資したい決算書4.保有不動産に担保余力がある
銀行が融資したい決算書5.土地・投資有価証券に含み損がない
銀行が融資したい決算書6.固定資産が現金化できる可能性がある
銀行が融資したい決算書7.累積欠損でも社長に個人資産がある
銀行が融資したい決算書8.仮払金、立替金、仮受金、預り金が少ない
銀行が融資したい決算書9.貸付金がない
銀行が融資したい決算書10.売掛金が少ない
銀行が融資したい決算書11.月次の勘定科目内訳書がある
銀行が融資したい決算書12.棚卸資産の金額が妥当
決算書を見たい人4.信用保証協会
信用保証協会も銀行と同様、融資基準として財務3表を見ます。
決算書を見たい人5.日本政策金融公庫
日本政策金融公庫も銀行と同様、融資基準として財務3表を見ます。
決算書を見たい人6.ベンチャーキャピタル、エンジェル
ベンチャーキャピタルや投資家の多くは、融資目的ではなく投資目的で決算書を見ます。
ただし彼らは、民間企業であったり、個人であるため、決算書の見方や評価の仕方はそれぞれ異なるでしょう。
社長であるあなたは、彼らの決算書の見方や評価の仕方を研究し、資金調達の確率を高める対策をとる必要があります。
資金調達方法6.個人投資家(エンジェル)から融資を受ける
資金調達方法7.ベンチャーキャピタルからの出資を受ける
シード投資
アーリー投資
ミドル投資
レイター投資
ベンチャーキャピタル・エンジェルが決算書を見るのは投資目的であるため、一番の見どころは現在の経営状況ではありません。
決算書を見る前に、事業の将来性と社長に対するファーストインプレッションが重要です。社長は、ベンチャーキャピタル・エンジェルのメガネかなった際に、改めて決算書を用意する必要があります。
決算書を見たい人7.機関投資家、個人投資家、証券会社
機関投資家や個人投資家は、証券取引所に上場している会社の株式売買を行う際に、売買に値するかの判断材料として決算書を見ます。
また、主幹事になる証券会社は、その会社が上場に値するか判断しなければいけませんし、顧客に対する投資先として妥当かどうかを判断しなければいけません。
上場については、以下を参考に。
参考:
5分で理解できる上場(IPO)とは?株式公開との違い
社長が夢見る上場(IPO)!株式公開のメリットとデメリット
決算書を見たい人8.信用調査会社
信用調査会社は、第三者からの依頼により、その会社の与信枠を測る目的で決算書を見ます。
決算書が信用調査会社にどのように見られて、どのように評価されるかは以下をご参考に。
参考:
企業信用調査とは?帝国データバンク評点に目安はあるか
決算書を見たい人9.社員
社員は、自分が所属している企業の業績や将来性を知るために貸借対照表を見ます。
なぜ貸借対照表かというと、一般社員の決算書関連書類の閲覧には制限があるためです。
会社法第440条第1項には、原則として、株式会社は貸借対照表の公告が必須だと記載されています。つまり、決算書全てを見ることはできないのですが、貸借対照表は公告を通じて、社員でも見ることができるということになります。
補足しておくと、中小企業の場合、公告の義務はありますが罰則はありません。結果、社員に貸借対照表を見せなくても、誰にも咎められることはないということです。
決算書を見たい人10.取引先
新規の取引先が大手である場合、決算書の開示を求められることがあります。その取引先は、自分たちが取り引きをしてもリスクがないかを確かめるために決算書を見ます。
たとえ決算書を直接求められなかったとしても、信用調査会社を通して確認されることがあるため、どちらでも同じだとは思います。
帝国データバンクは、ある企業からX社の企業信用調査の依頼を受けると、調査員がX社に訪問し、X社社長に対して取材形式のヒアリングを行います。
ヒアリングした内容は、評価担当者が帝国データバンク独自の評価基準によって採点評価(評点)と各内容のレポートをまとめます。
依頼者は非公表(調査員もわからないらしい)、X社は調査レポートや評点は見せてもらえますが、評価方法やその基準になる考え方は教えてもらえません。
決算書を見たい人11.株主
株主は、投資先の企業が正しい運営をしているか、このまま投資を行っていて良いのかを判断するために決算書を見ます。
ちなみに、発行済株式の3/100以上の数の株式を有する株主は、会計帳簿閲覧請求権を持ちます。
議決権比率によって保有する権利は以下の通りです。
・議決権比率100%の場合:株主全員の同意による権利
・議決権比率3分の2以上の場合:定款変更、監査役の解任、株主総会の特殊決議、株主総会の特別決議を単独採決
・議決権比率50%超の場合:取締役の選任・解任、監査役の選任、計算書類の承認、株主総会の普通決議を単独採決
・議決権比率10%以上の場合:解散請求
・議決権比率3%以上の場合:株主総会の招集、帳簿の閲覧
・議決権比率1%以上の場合:株主提案権つまり中小企業であっても、3%以上の株式を保有している株主は決算書の全てを閲覧する権利があるということになります。
決算書で経営状態を知りたい人の立場と目的まとめ
ご紹介したように、決算書はさまざまな立場の方が様々な目的を行使するために必要としています。
銀行が融資の判断材料にしたり、投資家が投資に活用するだけではありません。
もし、顧客に対する自社の営業力や提案力を強化したい場合は、従業員が決算書を読めるように教育していくことをおすすめします。
営業担当者やマーケティング担当者が顧客の経営状態を分析し、営業や業績把握に使うことは必須になりつつあるためです。
これだけさまざまなシチュエーションで決算書が使われているということは、世の中には意外と決算書を読み解ける方が多いということです。
もちろん社長であれば、周りの誰よりも自社の決算書を把握していなければいけません。
決算書の内容を把握していなければ、いざ決算書を求められた際に、まともな受け答えどころか何をどこまで提示して良いかの判断さえできません。
まずは、決算書の数字から今期の業績を把握し、業績を向上する方法を常に考え続けるという基本的な観点から決算書を把握できるようにしましょう。
ちなみに、他社の決算書を取得するための手段は色々あります。以下をご参考に。
それぞれの立場の方に求められた際に、何を基準に話をしていけば良いかを考えるのは、次のステップです。