経営を行う上では法律に関する知識も不可欠になりますが、実際のところは自信が持てないでいる方もいるかもしれません。
今回は、某法律事務所が違反した「景表法」の概要とともに、製品やサービスの広告を出す際に気をつけるべきポイントを解説します。
ある法律事務所が違反した景表法
テレビCMでもお馴染みの某法律事務所が、「景表法」に違反したとして再発防止の措置命令を受けました。
違反の内容は、
あるキャンペーンを約1か月限定としておきながら、実際には4年10か月に渡って同キャンペーンを行っていたということです。
「期間限定」と謳っているにもかかわらず、実際には5年近くもキャンペーンを行っていたという事実が、景品表示法に違反していたのです。2017年10月には東京弁護士会から2ヶ月間の業務停止処分を受けています。
今回注目されている「景品表示法」とは、不当な景品・表示を規制する法律であり、ここでいう景品には粗品やおまけ、商品を含む物品・金銭などの利益が含まれています。これらの景品に関して、誤認されるような広告の表示を禁止しているということになります。
何気なく作っている広告でも、景品・表示の内容が実際のものよりも過大であれば法律違反になる可能性があります。
景品表示法に関しては、毎年一定数の調査件数があります。次の表で確認してみましょう。
特徴的な点は、調査件数自体は大きく増えているわけではありませんが、外部からの情報提供が増加している点です。
情報提供のうち、実際に景品表示法違反として処理されることが妥当と判断された件数は
・平成23年に392件
・平成24年に425件
・平成25年には560件
とされています。
景表法違反として認められなかったものを含めると、情報提供数は平成25年度には5,858件という数字になっており、外部からの目も厳しくなってきていることがうかがえるでしょう。たとえ故意でなくても法違反とみなされる可能性はあるので、誤解を招くような表示は避けなければなりません。
景表法で規制されていること
景表法で規制されていることは大きく3つに分けられます。
①優良誤認表示
②有利誤認表示
③その他の誤認させるおそれのある表示
まずは「優良誤認表示」と呼ばれるもので、これは製品や役務の品質や規格について、実際よりも著しく優良であると示すことを指します。例えば、商品の成分、性能、効果、製造方法などに関して著しく誇大な表示をしていれば消費者の誤認を招くと判断されます。ただ、表示の根拠となる資料を提出できる場合は不当な表示とはならないことがあります。
次に、「有利誤認表示」があり、これは価格や取引条件に関して実際よりも著しく有利であると誤認させる表示を指します。例えば、他の事業者の販売価格と比較して安く見せかける場合も、正しい内容に基づいた表記でなければ有利誤認表示とされる可能性があります。
最後に、「その他の誤認させるおそれのある表示」という分類があり、こちらは次の6つに関して指定されています。
1. 無果汁の清涼飲料水についての表示
2. 商品の原産国に関する不当な表示
3. 消費者信用の融資に関する不当な表示
4. 不動産のおとり広告に関する表示
5. おとり広告に関する表示
6. 有料老人ホームに関する不当な表示
これらに関して誤認されるような内容を含めて不当に顧客を誘引することは禁止されています。
また、景表法には課徴金制度も導入されており、違反した場合には不当表示があった商品・サービス代金の3%を納めなければなりません。
利用者への返金額と国民生活センターへの寄付の合計が、売上の3%を超えた場合には課徴金が免除されることになっています。なかなか自主的に申し出るケースは少ないと思われますが、自己申告の場合は課徴金が半額になる措置もあります。いずれにせよ、課徴金を支払うとなると経営的にも大きなダメージとなるので、疑われるような表示は最初からしないことがベターです。
景表法違反を回避するコツ
景表法違反を回避するには、まずどのような種別の違反があるのか、先にご紹介した内容を頭に入れておきましょう。結局のところ、製品やサービスの魅力を事実とはかけ離れた形でPRしてしまうと、景表法違反になってしまいます。
景表法違反にならないためのコツとしては、「根拠に基づいた表示」を心がけることが挙げられます。
例えば、「他社の◯倍」と謳うのであればそれを示すデータが必要になりますし、「新技術」と表示するのであれば特許などの取得実績があると説明がつきます。常に根拠を意識した表示を心がけましょう。
実際の事例としては、プーアール茶について「まったく新しいダイエット茶」「苦しむことなくラクラクダイエットサポート」などと表現したことで措置命令が出たケースもあります。何気なく使っている表現も実は景表法に引っかかっている可能性があるので、実際よりも誇張していないか自問自答する必要があります。
まとめ
知識がなければ意外と陥ってしまいやすい景表法違反。実際、ホームページや通販サイトを見ても怪しいと思われる表示を見かけることもあります。必ず事実に即して根拠に基づいた表示を心がけましょう。
誇張した表現によって売上が伸びることもあるかもしれませんが、結果的に課徴金を請求されたり、業務停止に追い込まれては意味がありません。誠意を持って事実に即した記載を心がけましょう。