経営戦略・企業戦略について、その違いがよくわからないという経営者も多いことでしょう。
実際、どんな考え方なのか噛み砕いて説明します。また、具体的な戦略の方向性についても解説するので参考にしてみてはいかがでしょうか。
経営戦略・企業戦略の違い
経営戦略の中には、企業戦略・事業戦略・機能戦略という3つのレベルがあります。大企業なら経営を行う上で意識している部分でありますが、小企業の経営者であれば正直あまり考えたことがないという方もいるかもしれません。
まず、「企業戦略」については、その名の通り企業のビジョンを決めて方向付けを行うことです。経営ビジョンを策定し、それを浸透させる。そして事業の基本的な構成を考えていくプロセスです。また、経営資源をどのように配分していくのか、事業の取捨選択をどうすべきかを考える過程も企業戦略に含まれています。
2つ目の「事業戦略」とは、事業レベルで必要になってくることを指します。実際の商品やサービスをどのように発展させていくのか、顧客の満足度を上げるためにはどうしたら良いのかを考え、具体的なアクションに移していきます。
3つ目の「機能戦略」とは、経営を支える研究開発・生産・物流・営業などのプロセスにおけることを指しています。また、企業の機能として財務・人事・総務・経営企画などの部門を設け、機能を方向付けしていく部分も含まれています。特に企業の機能間で整合性を持たせること、そして事業戦略に基づいて戦略を立てることがポイントです。
経営戦略を立てる上では、まず企業戦略を考え、それを事業戦略・機能戦略に落とし込んでいくという流れが一般的です。混同しがちな経営戦略・企業戦略という言葉の違いをここで確認しておきましょう。
アンゾフのフレームワーク
アンゾフは経営戦略の父といわれています。1957年に彼が論文で発表した、成長のための戦略の観点が「アンゾフのマトリックス」です。次のようなマトリックスは世の中によく知られています。
引用元:https://blog.kairosmarketing.net/marketing-strategy/ansoff-matrix-140725/
このフレームワークによると、新規・既存の製品あるいは市場のどこを狙うかによって、戦略が分類されています。まず、既存の製品を既存の市場で発展させるためには、「市場への浸透」がカギになります。これは難易度が高いといわれていますが、購買数・購買頻度を高めることしか検討できないことが理由です。この戦略だけでは長期的に成果を出すのが難しいです。既存製品を新規市場に出していきたいという戦略では、「市場の開拓」という方向性になるでしょう。マトリックスでは左上に該当します。既存製品の売り上げを伸ばす上では現実的な方法です。新たなターゲットを獲得することにもつながる可能性があります。新規製品を既存の市場・顧客に提供する戦略では、「製品開発」という流れになります。特に食品などを手がける企業ではこうした戦略で売り上げを伸ばしています。
最後に、新しい製品を新たな市場で提供するとなると、「多角化」という戦略が用いられます。この戦略では、新しい知識・新しい経営資源が必要になってくるでしょう。一般的には、自社で成長していく戦略よりも、他社との提携・買収による方法が成功しやすいです。
アンゾフのフレームワークを用いると、経営戦略の大原則ともいえる部分を整理することができます。闇雲に事業を発展させていくのではなく、今自社が目指すべきところはどこなのかを意識することが肝心です。
事業を発展させていくにあたり、中小企業を対象とした調査の結果では次のようなデータが出ています。
新規事業を最近10年で実施・検討したことがあるかどうかについて、「実施も検討もしたことがない」という経営者は一定数いるようです。実際、新たな事業を始めるためには様々な資源が必要になるので、敷居が高いと感じる経営者もいるのです。しかし、企業として成長させていくためには、しっかりと戦略を立てた上でさらなる高みを目指すことも重要です。
企業として取り組むべきこと
小企業では、明確な戦略を立てずに、部下を叱咤激励するばかりの経営者も少なくありません。それだけでは企業は成長していかないことが大半でしょう。経営者としてビジョンを持つことは欠かせないのです。
実際の事例を見てみると、株式会社東日本土地開発では、2017年の経営戦略として「バイオマス発電事業」を導入しました。再生可能エネルギー事業へ参入し、成長させていくという戦略を立てています。また、新規事業を導入することによって、売上高・営業利益の目標値も設定しています。
企業が目指す方向性を再検討し、それに向けた経営戦略を展開していく、こうしたビジョンと実践が企業の発展には欠かせません。自社の経営のあり方を今一度振り返り、構造に沿って事業を発展させていく心構えが必要です。
まとめ
「戦略なきは座して死を待つがごとし」という言葉もあるくらい、経営において戦略の占める役割は大きなものとなっています。
何を使って、誰をターゲットにするのか、既存の商品で勝負するのか、新規に商品や市場を開拓するのか、こうした枠組みをはっきりと意識して事業を展開してみましょう。