経営におけるアウトソーシングという考え方が、様々な企業に広がっています。数十年前までは、自社にないものを外注したり委託したりすることでそれらのサービスを代用する、という考えでした。例えば自社に大きな倉庫がないので倉庫業務を委託して、そこから自社の商品を発送するとか、必要な人材を自社で探す手間を省くために人材を外部に委託するなどの企業が一般的でした。
近年はより戦略的なアウトソーシング、経営戦略の一環として利用する企業が増えています。例えばコールセンターといった人材が多数必要な業務を海外に委託したり、企業の内部で行っていた事務業務といった事業をまるごと委託する企業も出てきました。海外に委託している場合もあれば国内で行われている場合もありますが、いずれにしろ、より業績を上げるためにアウトソーシングを利用する、という考え方は一般的になりつつあります。
現在の企業に見られるアウトソーシングの広がりと、経理業務を実際に委託する際のメリット・デメリットについてしっかり検討し、より自社にあうものを選択する方法を考えてみたいと思います。
アウトソーシングの広がりと利用
近年アウトソーシングを利用する企業は増加傾向にあり、企業の規模に関わらず、業務のある部分を委託するという企業も増えています。
引用元:https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20170412Apr.html
例えば、2016年度の国内ビジネスプロセスアウトソーシングの市場は前年より4.9%の増加しており、この表を見ても引き続き市場を拡大している様子がわかります。調達・購買サービス市場、人事サービス市場、カスタマーケアサービス市場、財務・経理サービス市場の4分野の市場を調査したグラフですが、財務・経理分野も安定しており、一定数の企業が利用している、ということがわかります。
人材不足などの背景がどの企業にもあるため、委託事業は不況時にもあまり影響を受けることなく、安定して増加しています。
各企業がアウトソーシングを有効的に利用することによって、自社の販売により多くの人材と時間を注力でき、結果として企業の安定的拡大にもつながっていくことでしょう。次項からメリットとデメリットを考えていきたいと思います。
経理業務をアウトソーシングするメリット
まずはメリットを考えましょう。主なメリットは、やはり社内の本来の業務に注力できるということです。経理業務は各企業によって必要不可欠ですが、請求書の発行、入金の確認、納品と請求の整合をチェックすることなど、大部分はルーティンワークととらえることができるものが多いためアウトソーシングは比較的実行しやすい分野といえます。
業務をフロー化することによってより効率的になり、最終的にはコスト削減につながるメリットもあげられます。社内で経理業務を行っている場合は、専門性の高い能力をもっている社員は少人数かもしれませんが、委託によって、より専門性の高い人材が自社の業務を助けてくれることになります。業務をしっかりと見直すことで無駄なルーティンワークが削減され、効率が上がるという利点があります。経費業務を手助けするパソコンソフトも様々なものがあり、これらを複合的に利用する企業もあります。
また社外に委託するなら、細かなミスや気づかない間に入り込む不正を抑制できるメリットもあります。第三者が業務を見届けてくれているため、適度な緊張感も持続できます。
経理業務をアウトソーシングするデメリット
実際にアウトソーシングを考慮する企業も、起こりうるデメリットも検討する必要があるでしょう。
アウトソーシング事業に限ったことではありませんが、信頼できる会社を探すにはある程度の時間がかかることでしょう。経理業務を請け負う会社は、自社の一部分を預けることができるパートナーでしょうか。会社の業務フローを理解してくれているでしょうか。任せて大丈夫だと安心できるパートナーに出会うのに時間がかかることは十分考えられます。
また自社のコスト削減が目的ですが、費用削減を実感できるのは数年後になることでしょう。短いスパンで考えていると、何のための委託かわからなくなってしまいます。少し長期的な目でアウトソーシングを考える必要があります。
急な出費や支払いが必要な時も、社内に経理部があるようには簡単に緊急時の対応が取りにくい、というデメリットがあります。
自社における経理業務の中で、委託できる範囲とそうではない範囲を見分けることが大切になってきます。
引用元:https://keiriplus.jp/efficiency/jyojyokigyo_outsourcing/
適正なものはルーティンワークに関わるものや、書類と支払った金額のチェックといった仕事などです。経理ソフトで行える業務も委託しやすい分野です。
まとめ
経理業務をアウトソーシングできるなら、総合的に見ると会社にとって大きなメリットになることでしょう。
本来の目的が果たされるなら、利益拡大にもつながります。しかし全ての業務を一度に委託するのは注意が必要だ、ということも分かります。具体的にどんな業務を委託すべきかについては、企業の規模、業務の内容により個々に選択する必要があるでしょう。