仕事のムリ・ムダ・ムラとは
「仕事のムリ・ムダ・ムラ」という言葉があります。
誰が言い始めたのかは知りませんが、私はトヨタ生産方式で有名になった言葉だと認識しています。
この仕事のムリ・ムダ・ムラとは、仕事の負荷が能力を上回っている状態(ムリ)、仕事の負荷が能力を下回っている状態(ムダ)、ムリとムダの両方が混在して時間によって表面化する状態(ムラ)のことを言います。
トヨタ生産方式では、この「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすことが最大の合理化だとしています。
さてあなたは、私たち中小企業がこのトヨタ生産方式のように、大規模な「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすような生産体制をつくり上げることは難しいと考えるかもしれません。
ただ、ちょっとした身の回りの工夫によって、小さな「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすような思考を持つことは可能です。
例えば経費削減。
経費削減はムダがあるため行います。ところが、経費削減にムリがあってはいけませんし、ムリとムダが混在するムラを作ってもいけません。
そこで今回は、「ムリ・ムダ・ムラ」を念頭において経費削減において、やってはいけないことをピックアップしてみたいと思います。
やってはいけない経費削減1.社員のモチベーションを下げる方法
経費削減は経費を減らす行為なので、これまでよりも作業効率を上げるか、これまでにない作業改革を行わなければいけません。
当然、現場で作業を行うのは社員です。社員のモチベーションを一番下げてしまう経費削減方法は「ムリ」を強要させる経費削減です。
これまでと変わらない作業内容で、単純に人を減らして1.5人分の作業を1人で行う体制を作ったり、裁量労働制や変形労働時間制などを説明不足のまま導入して経費削減を実現しようとすれば、将来の人材流出に繋がるでしょう。
やってはいけない経費削減2.経費削減が売上低下を招く方法
あなたの会社で売上を作っている費用は何でしょうか。恐らく、広告宣伝費、販売促進費、営業マンの人件費などだと思います。
この部分の経費削減を行う場合は、必ずそれぞれの費用がどのような影響を与えているか、費用対効果を計測しつつ慎重に経費削減を行わなければいけません。
何となくチラシを削ってしまう。
何となく営業マンを削ってしまう。
という安易な経費削減を行うと、直接売上に寄与していなかったとしても、口コミによる集客が減ってしまったり、スムーズな営業の入り口がなくなってしまうなどの間接的な売上低下に繋がるかもしれません。
やってはいけない経費削減3.商品の品質を落としてしまう方法
商売とは単純に商品や労働力を販売しているわけではありません。
あなたの会社の商品が他社より売れる理由、他社より製造の引き合いが多い理由は、その価値が認められ、商品の品質が他社よりも高いと思われているためです。
確かに、品質にかかわる管理部門は労務費などの変動費とは違い、固定費として会社の経営を圧迫する可能性があります。
単純にサービスや品質を落として経費削減をするのではなく、高サービス、高品質を維持しながら経費削減ができる業務内容を組み立てましょう。
やってはいけない経費削減4.信用低下に繋がる方法
あなたの会社の信用はどこで保たれているでしょう。
営業マンかも知れませんし、商品の品質かもしれません。または、大きな工場かもしれませんし、国道沿いの大きな看板かもしれません。
“知っていることで担保されている信用”は意外と多いものです。これらのブランディング要素に繋がる経費削減項目は、顧客の信用低下を招かないように注意しなければいけません。
やってはいけない経費削減5.法令遵守に反する方法
言うまでもなく、法律に反しないように経費削減を行わなければいけません。
つまり脱税をしないということですね。
やってはいけない経費削減6.削減理由が明確ではない方法
経費削減は必ず理由を明確にして行わなければいけません。
理由も言わずにいきなり「経費を削減しろ!」と言われると、「この会社大丈夫かな……。」「また社長の気まぐれが始まったよ……。」と考える社員も出てくるかもしれません。
同じ船に乗っているとはいえ、社員が多くなるほど利害関係は複雑になります。そのため、経費削減が会社にとって明確なメリットになることを示さなければいけません。
または、経費削減が会社にとって明確なリスク回避になることを示さなければいけません。
やってはいけない経費削減7.社長のモチベーションが下がる方法
経費削減の大号令は社長が下すものです。
勢い良く経費削減を叫んではみたものの、「何だか社内が暗くなった感じがする……。」「みんな自分に反感を抱いていないかな……。」そんなモチベーションで経費削減に踏み切ると、社員の気持ちは余計に沈んでしまうでしょう。
経費削減の理由が未来の投資のためであれ、現在の危機回避であれ、社員が協力してくれなければ十分な結果は出せませんし、前向きな気持で取り組んでくれなければ経費削減が会社崩壊のきっかけにもなりかねません。
まずは社長が強い気持ちと明確な理由を持って、前向きに経費削減に取り組む気持ちが必要です。
経費削減で絶対やってはいけないことまとめ
大げさな表現をすると、これまで使ってきた経費を削減するということは、それまであった常識が変わってしまうということです。
そのため、どこに影響が出てくるかは予測をしなければいけませんし、予測してもわからないものは強い心構えが必要です。
例えば、オフィスの電気を数か所付けずに節電をすると多少経費削減になるかもしれませんが、作業効率が悪くなってしまうかもしれません。
社内資料の印刷は全て白黒で行うというルールが、今後の事業の理解度を下げてしまうかもしれません。
また、経費削減を声高に叫びすぎて、「あの会社ヤバイらしいよ。」とあらぬ噂が立ってしまうかもしれません。
経費削減で「ムリ・ムダ・ムラ」が出ないようにするためには、一気に変化をさせないことが重要です。
そのためには、社長が現場の業務や社内体制を理解しておくことが大切です。仮に「キャッシュがやばい!」という話だとしても、経費削減だけで全てを賄う事はできないはずです。
参考:
キャッシュがやばい…資金繰り改善13条で運転資金ショートを防げ
経費削減は「ムリ・ムダ・ムラ」に気をつけて、ゆっくりと計画的に行うようにしましょう。