中小企業も必須!株主総会開催手順と終了後の手続き

中小企業も必須!株主総会開催手順と終了後の手続き

株主総会は上場企業だけ?

株主総会と聞くと、上場企業が行っている企業イベントというイメージを持っている方は多いでしょう。

社長であればそう思わないはずですが、中小企業の取締役や株主の一部には自分に関係がないものと認識している方もいます。

ところが、株主総会は、株式会社であればどんな企業でも行うものです。

ではなぜ、中小企業の取締役や株主の一部で、自分には関係がないと思われているのか?

誤解を恐れずに言うと、上場企業以外の株主総会は簡略化して行うことが普通になってしまっているからです。

中小企業は社長が100%株主だったり、取締役が社長1人だけという会社はよくありますが、そうではなくても、社長のワンマン経営の場合、株主総会や取締役会はよく簡略化されています。

簡略化とは、株主総会や取締役会をやったことにして他の株主や取締役から同意だけをもらい、議事録のみを作成するというものです。

これは良いこととは言えません。本来株主がいるのであれば、形だけではなく実際に時間を設けて株主総会を行った方が良いでしょう。

もし株主が複数いないのであれば、取締役会を開き、会社経営の総括を行った方が良いでしょう。

株主総会、取締役会開催の是非はまた別途お伝えするとして、今回は、株主総会の開催手順と終了後に必要な手続きのお話をしたいと思います。

定時株主総会開催の手順

一般的な株式会社の場合、以下の手順で株主総会の開催準備をし開催後の処理を行います。

株主総会開催手順1.決算日以降に日程を決める

定時株主総会は、決算日の翌日から3か月以内に開催されることが一般的です。

ただし、これは上場企業など株主総会を外部の株主と一緒に行う場合のお話です。その他の中小企業の場合は、決算書作成、納税などがある2か月以内に行っているでしょう。

株主総会開催手順2.場所、時間、課題の設定

株主の規模によっては、株主総会を自社では行えない場合があります。そのため、株主総会の開催場所は本店所在地でなくても良いことになっています。

たとえば、本拠地が札幌で商圏が札幌の会社でも、東京で株主総会を行えます。もちろん沖縄でも。

株主総会開催手順3.招集通知の作成と送付

招集通知は、会社法299条1項により、開催日の2週間前までに発送しなければいけません。ただし、上場企業以外は、1週間前までの発送になっています。

招集通知の記載事項は以下の通りです。

—–
1.株主総会の日時及び場所
2.株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
3.株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
4.株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
5.法務省令で定める事項
—–

さらに、招集通知には、貸借対照表などの計算書類も添付しなければいけません。

また、事前にすべての株主の同意がある場合は、株主総会の招集にかかる手続は不要です。

株主総会開催手順4.株主総会の開催

株主総会の出席する株主には、保有株数や保有時期によって議題提案権、議案提案権、通知請求権などがあり、議題に対しても、株式の議決権によって株主が参加できる決議の種類が分かれます。

ただし、中小企業にはあまり関係がないことなので、ここでは省略します。

株主総会終了後に必要な手続き

定時株主総会開催の手順にも記載しましたが、株主総会は行った事実を記録する必要があります。その上で、株主総会後に必要な手続きは以下の3つです。

株主総会後の手続き1.議事録の作成

株主総会で決議された事項を議事録に残すことは、法律で義務付けられています。議事録には、議事の経過の要領、およびその結果を記載していくことになります。

議事録の作成は社長が行う必要はありません。税理士が作成できるため、詳細は顧問税理士に聞いてください。

株主総会後の手続き2.登記事項の変更

会社の規模が大きくなるほど、新年度に登記手続きが必要な項目が増えます。たとえば、役員変更や住所変更などです。

登記事項の変更の際は、議事録を添付して変更登記手続きを行います。登記手続きは、本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内に行います。

株主総会後の手続き3.配当金の支払い

社外に株主がいる場合、配当金の支払いを決定していることもあるでしょう。

余剰金分配、いわゆる配当の決議がなされた場合は、権利確定日を記載した配当通知を株主へ送付し、権利確定日に支払い手続きを遅滞なく行います。

株主総会開催の手順と終了後の手続きまとめ

本来は、上記の手順で株主総会を開催し、議題を発表し、質疑応答をし、議事録の作成を行い、株主総会後の処理を行います。

冒頭で、株主総会を簡略化できるといったのは、

—–
・中小企業には関係者が少ないため口頭で議題の確認ができること
・そもそも株主が社長しかいないため、総会の必要がないこと
—–

となどが挙げられます。

このような体制は、非常に便利でコストがかからないメリットもありますが、社内に不満が溜まりやすく、経営者の代替わりなどの大きな変革の際に、会社の存続にかかわる事態に発展してしまうこともあります。

全ての手順を正式に踏んで株主総会を行うかどうかは、会社の規模によりますが、せめて株主に必要な手順と必要な手続きは押さえておいてください。

同じように、複数の取締役がいるにもかかわらず取締役会を開かない中小企業はたくさんあります。

もし、定常的に取締役会を開かない体制を作ってしまっている場合、後々リスクが発生することがあります。

社長の権限において取締役会を行わない場合のリスクは、決議事項が、無効になってしまう可能性があることです。

中小企業において特に重要な事項には、利益相反取引の許可や競業取引の許可などがあります。

つまり、社長が好き勝手なことを取締役会の承認を得ずに行っていた場合、代替わりした際に、会社の利益に反することをしたという理由で、裁判にまで発展することもあるのです。

参考:
議事録だけはNG!取締役会と株主総会を行わないリスク

これらのリスクは、社長の代替わりや倒産の危機に陥った場合に顕在化するだけでなく、最悪取締役全体の責任問題にまで及ぶ可能性があります。

経営責任のメインは賠償責任です。取締役に賠償責任が発生するのは、以下の2つの場合です。

—–
1.その取締役が、職責を全うせず顧客等に損失を与えた場合
2.その取締役が、悪意や重大な過失で損害を与えた場合
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もちろん、大きな企業であるほど売上金額は大きくなるため、連帯責任における賠償も高額になり場合があります。

参考:
社長や取締役の経営責任とは?損害賠償責任と連帯責任

このようなリスクを回避するためにも、開催が義務付けられている株主総会・取締役会は正式な流れに沿って開催し、後々のリスクを作らないように十分注意しておきましょう。

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