法人口座の選定基準は?
法人口座は単純に売上が振り込まれるだけの口座ではなく、会社が存在するという信頼の窓口です。そのため、法人口座選びはとても重要です。
では金融機関ならどこでも良いかというとそうではありません。用途に合わせて法人口座を選ぶためには、いくつかの選定基準があります。
そこで今回は法人口座が開設できる都市銀行、地方銀行、信用金庫・信用組合、ネット銀行、ゆうちょ銀行の特徴をご紹介します。
以下の選定基準であなたが重視したい項目を思い浮かべながら読み進めてもらうとわかりやすいはずです。
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・取引相手から信用を得たいか?
・近くにあり、使いやすいか?
・担当者が身近で相談しやすいか?
・各種手数料が安いか?
・比較的融資を受けやすいか?
・ネットバンクが使いやすいか?
・各種払込に対応しているか?
・ネットバンクの利用時間帯は?
・ビジネスマッチングなどの利点があるか?
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法人口座開設可能な金融機関1.都市銀行
東京近郊の会社であれば、最初に思いつくのが都市銀行での法人口座開設です。もしあなたが取引先から信用を得たいなら都市銀行を選ぶと良いでしょう。
都市銀行は東京三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行、(埼玉りそな銀行)の4行(+1行)ですが、ネームバリューが高いため取引銀行として公表できることは魅力の1つでしょう。ちなみにりそなは大阪です。
取引相手から信用を得たいか?
全国どこにいても誰でも知っていることが都市銀行の利点です。口座開設審査が他の金融機関よりも厳しいため、法人口座を持っていることが信用に繋がる場合があります。
近くにあり、使いやすいか?
会社がどこにあるかによります。あなたの会社が地方にある場合は、法人口座開設の審査基準が厳しくなる場合があります。
また、都市銀行がメジャーだと言っても全国どこにでもあるわけではないため、地方の会社の場合使いやすいとは感じないでしょう。
担当者が身近で相談しやすいか?
もちろん担当者によりますが、都市銀行は関東近県の名だたる企業が法人口座を開いている銀行です。起業したてで同列に扱ってもらえる可能性は極端に低いでしょう。
各種手数料が安いか?
手数料は安くはありません。
比較的融資を受けやすいか?
担当者が身近ではないため、融資は受けにくいと思います。
ネットバンクが使いやすいか?
都市銀行のネットバンクはどこも月額2,100円/月の基本料がかかります。
各種払込に対応しているか?
ネットを通じて公共料金支払いができる「Pay-easy(ペイジー)」には全ての都市銀行が対応しています。また全行ATMからの支払いに対応しています。確認はこちらからどうぞ。
参考:
ペイジーが使える金融機関|いつでも、どこでも、ペイジー。
ネットバンクの利用時間帯は?
都市銀行のネットバンクは平日・休日共に接続できない時間帯が存在するので注意が必要です。
ビジネスマッチングなどの利点があるか?
都市銀行ではやはり存在感を持たなければ、プラスアルファのメリットをは教授できないでしょう。そのため起業間もない会社では、ビジネスマッチングなどは期待しない方が良いでしょう。
法人口座開設可能な金融機関2.地方銀行
東京近郊でなければ無理をして都市銀行にする必要はありません。その土地には地元密着型の地方銀行が存在していて、地元での影響力は絶大です。
恐らくあなたの会社の取引先もその土地周辺のケースが多く、担当者を介して仕事に繋がるケースもあるため、下手に都市銀行にするよりも安心感があります。
法人口座開設には面談がありますが、都市銀行よりは開設しやすいでしょう。
取引相手から信用を得たいか?
その土地にある地方銀行は、その土地にいればある程度ランクがわかるはずです。その土地よっては都市銀行の法人口座を開設するよりも安心と信頼感を得られるでしょう。
健全で有名な地方銀行は、横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行などがあります。
近くにあり、使いやすいか?
地方銀行なので会社の近くにあるはずです。社長になるとわかりますが、銀行に行くシチュエーションは割とあります。銀行が近くにあることは非常にメリットです。
担当者が身近で相談しやすいか?
担当者によりますが、地方銀行の担当者は都市銀行よりは相談しやすいはずです。ただし、地方銀行によっては県外に複数支店を出している場合があり、それによって担当者が土地勘がない(都道府県外の)人ということはよくあります。
各種手数料が安いか?
地方銀行によって違います。たくさんあるので調べてもらうしかないのですが、都市銀行と変わらないか少し安く設定している地方銀行が多いと思います。
比較的融資を受けやすいか?
あなたの会社がその地方において有用だと認められた場合は、地方銀行からの融資はかなり受けやすくなります。なぜなら、銀行からの融資先が限られるためです。
ネットバンクが使いやすいか?
こちらも地方銀行毎に違うので、調べてもらうしかありません。
各種払込に対応しているか?
地方銀行によって違いますので、こちらで確認して下さい。ペイジーを使ってATMから公共料金支払いができるところはかなり少ないですね。
参考:
ペイジーが使える金融機関|いつでも、どこでも、ペイジー。
ネットバンクの利用時間帯は?
こちらも地方銀行によりますが、24時間365日使える地方銀行のネットバンクはかなり少ないのではないかと思います。
ビジネスマッチングなどの利点があるか?
地方銀行毎や支店毎に積極的に行っている場合もありますが、積極的なビジネスマッチングを促したい場合は担当者と仲良くなることが重要です。
銀行マンは顧客と食事に行くことが禁止されているため、人間的な魅力で仲良くなるしかないでしょう。
法人口座開設可能な金融機関3.信用金庫・信用組合
誤解を恐れずに言うと、信用金庫・信用組合は融資には有利な金融機関と言って良いと思います。担当者の担当範囲が広範囲ではないため1人1人の折衝が手厚く、より事業の現状を伝えやすい関係を作ることができるでしょう。
また、積極的なビジネスマッチングも行っているため、人間関係によって仕事が左右される場合には使いやすいはずです。
取引相手から信用を得たいか?
都市銀行、地方銀行に比べてしまうと信用力では劣りますが、法人口座に信用金庫・信用組合を使っているからと言って取引を断られたというお話しは聞いたことがありません。
近くにあり、使いやすいか?
地方銀行と同様、地元の信用金庫・信用組合なので比較的近くにはあって使いやすいはずです。
担当者が身近で相談しやすいか?
信用金庫・信用組合は銀行とは違い、地域の相互扶助を目的とする協同組織型の金融機関なので、担当者以外でもしっかりと話しをすれば相談には乗ってもらいやすいと思います。
各種手数料が安いか?
信用金庫・信用組合も地方毎にたくさんあるので調べてもらうしかありません。
比較的融資を受けやすいか?
信用金庫・信用組合では大きな融資額は望めませんが、融資相談には乗ってもらえるはずです。
ネットバンクが使いやすいか?
こちらも信用金庫・信用組合毎に違うので調べてもらうしかありません。
各種払込に対応しているか?
参考:
ペイジーが使える金融機関|いつでも、どこでも、ペイジー。
信用金庫・信用組合毎に違うのでこちらで確認して下さい。
ネットバンクの利用時間帯は?
こちらも各信用金庫・信用組合によって違います。
ビジネスマッチングなどの利点があるか?
ビジネスマッチングはかなり積極的に行っているのではないかと思います。
ただし、信用金庫・信用組合を利用する法人が対象になるため、あなたの会社が大企業や関東近県の会社との取引の場合、大きなメリットを得られないかもしれません。
法人口座開設可能な金融機関4.ネット専業銀行
店舗を持たないネット専業銀行で法人口座を開設する人も増えてきたようです。ただし、大手の中には取引銀行指定をする企業もあるので、その場合ネット専業銀行の法人口座は使えません。
逆に、個人事業主やネットショップ運営にはネット専業銀行の法人口座が欠かせません。現在あるネット専業銀行は次の8つです。
※2015年3月時点
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・ジャパンネット銀行
・ソニー銀行
・住信SBIネット銀行
・イオン銀行
・セブン銀行
・楽天銀行
・じぶん銀行
・大和ネクスト銀行
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取引相手から信用を得たいか?
取引相手によりますが、個人相手であれば全く問題はないと思います。大手企業や歴史のある会社を相手にする場合は、取引口座の制限を受ける可能性があります。
近くにあり、使いやすいか?
どこからでも繋がるので場所は関係ありません。
担当者が身近で相談しやすいか?
ネットバンクなので担当者は存在しません。そのため何らかの相談をすることもできません。
各種手数料が安いか?
各ネット専業銀行とも基本料金はかかりませんし、振込手数料も安く設定されています。そのため、振り込みが多い場合には有利です。
また、顧客からの振り込みが多い場合にも喜ばれるでしょう。
比較的融資を受けやすいか?
ネット専業銀行は、金融機関としての法人融資はありません。
ネットバンクが使いやすいか?
ネット専業銀行なので使いやすくて当たり前ですね。
各種払込に対応しているか?
楽天銀行のみペイジーに対応しています。ネット専業銀行は進化が激しいため、便利な機能はすぐに機能追加されるはずです。
ネットバンクの利用時間帯は?
ネット専業銀行はどこでも24時間365日使えることが基本です。
ビジネスマッチングなどの利点があるか?
ネット専業銀行にビジネスマッチングを期待してはいけません。
法人口座開設可能な金融機関5.ゆうちょ銀行
最近、ゆうちょ銀行での法人口座開設の話をよく聞くようになりました。利点は誰もが知っている金融機関であり準公的機関であること、ネットバンクの利用料金や振込料金が安いことが挙げられます。
ただし、融資業務、社会保険料口座振替などの支払いには対応していません。個人事業主がメインに使ったり、法人がセカンドバンクとして使うのはありだと思います。
取引相手から信用を得たいか?
ゆうちょ銀行の知名度はバツグンですし、準公的機関なので銀行自体の信用もあります。ただし、法人口座としての知名度はまだ低いと思います。
近くにあり、使いやすいか?
ゆうちょ銀行は全国どこにでもあるため使いやすいはずです。
担当者が身近で相談しやすいか?
ゆうちょ銀行は融資業務等は行っていないため、担当者という概念はないと思います。
各種手数料が安いか?
ゆうちょ銀行は個人利用者が多いため、個人からの振り込みを受ける場合の同行間の手数料は無料です。その他も比較的安く設定されていて使い勝手は良いです。
その代わり、ATMから預入または払戻しをする場合は必ず手数料がかかります。
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平日8:45~18:00:1回につき108円
土曜日9:00~14:00:1回につき108円
上記以外:1回につき216円
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比較的融資を受けやすいか?
2015年3月時点では金融機関としての融資は、預金担保貸し付けを除き認められていません。法人融資を開始する噂はありますが、まだ認められていない状況です。
ネットバンクが使いやすいか?
ゆうちょ銀行のネットバンクの評価は高いと思います。
各種払込に対応しているか?
ATM、ネット共にペイジーには対応しています。
ネットバンクの利用時間帯は?
ここは残念ポイントですが、都市銀行と同様、ゆうちょ銀行のネットバンクには使えない時間が結構あります。
ビジネスマッチングなどの利点があるか?
私の知る限りビジネスマッチングはありません。
法人口座を開設できる金融機関の特徴まとめ
まずはおおまかに各種金融機関の法人口座開設にあたっての特徴を理解できれば良いと思います。というのも、法人口座は複数口座開設しても問題がないからです。
ただし、手間を考えると最初はある程度絞り込んでも良いと思います。
会社設立により企業対企業の取り引きを行ったり、将来的に金融機関のプロパー融資を受けたい、ビジネスの広がりを金融機関を通じて得たいということでなければ、ゆうちょ銀行やネット専業銀行をメインバンクにしても問題はないと思います。
もしそうではない場合は、やはり東京近郊では都市銀行、地方なら地方銀行がメインバンクの第一候補になります。
都市銀行は審査も厳しく、会社の内部事情まで鑑みて相談に乗ってくれることはまずないので、ある程度規模が拡大してから法人口座開設に臨めば良いでしょう。
東京近郊の会社の場合はまずは地方銀行や信用金庫・信用組合との取り引きから始めて、業務拡大の際に都市銀行と付き合い、地方の会社の場合は信用金庫・信用組合との取引から始めて地方銀行に移り、規模が大きくなれば都市銀行との取り引き……、とスケールアップしていくことが一般的ですね。