- 1. 個人事業主は様々な所得控除を認識すべき!
- 2. 個人事業主が認識する控除1.基礎控除
- 3. 個人事業主が認識する控除2.雑損控除
- 4. 個人事業主が認識する控除3.医療費控除
- 5. 個人事業主が認識する控除4.社会保険料控除
- 6. 個人事業主が認識する控除5.小規模企業共済等掛金控除
- 7. 個人事業主が認識する控除6.生命保険料控除
- 8. 個人事業主が認識する控除7.地震保険料控除
- 9. 個人事業主が認識する控除8.寄付金控除
- 10. 個人事業主が認識する控除9.寡婦控除、寡夫控除
- 11. 個人事業主が認識する控除10.勤労学生控除
- 12. 個人事業主が認識する控除11.障害者控除
- 13. 個人事業主が認識する控除12.配偶者控除
- 14. 個人事業主が認識する控除13.配偶者特別控除
- 15. 個人事業主が認識する控除14.扶養控除
- 16. 個人事業主が認識する控除15.青色申告特別控除
- 17. 個人事業主が意識すべき所得控除まとめ
個人事業主は様々な所得控除を認識すべき!
個人事業主には様々なメリット、デメリットがあります。
具体的なメリット、デメリットは上記を見て理解していただくとして、個人事業主が最大限のメリットを得るために強く意識すべきことが1つ。
それは所得控除です。通常、税額を決めるための課税所得は以下の式で計算されます。
課税所得=収入-経費-各種引当金、準備金等
ざっくりですが、課税所得に対する納税額の目安はこちら。
・課税所得100万円の場合、納税額は50,000円
・課税所得200万円の場合、納税額は102,500円
・課税所得300万円の場合、納税額は202,500円
・課税所得400万円の場合、納税額は372,500円
・課税所得500万円の場合、納税額は572,500円
・課税所得600万円の場合、納税額は772,500円
・課税所得700万円の場合、納税額は974,000円
・課税所得800万円の場合、納税額は1,204,000円
・課税所得900万円の場合、納税額は1,434,000円
・課税所得1,000万円の場合、納税額は1,764,000円
更に細かく課税所得に対する納税額を知りたい場合は以下を参考にしてください。
所得控除は、条件さえ合えば課税所得からさらに税額が控除されます。つまり所得控除額が大きいほど課税所得が下がり、納税額が少なくなるということです。
所得控除は、給与取得者なら意識をしなくても自動的に得られるメリットがありましたが、個人事業主は確定申告を自分で行うため、意識しなければ最大限のメリットを得られません。
そこで今回は、個人事業主が所得控除を最大限有効に活用するための15種類の所得控除をご紹介したいと思います。
個人事業主が認識する控除1.基礎控除
基礎控除は納税者全員が受けられる所得控除です。基本的な所得額から38万円を引くことができます。
基礎控除とは、納税者全てが一律の金額(所得税:38万円、住民税:33万円)を所得金額から控除できる所得控除のことです。
個人事業主が認識する控除2.雑損控除
災害や盗難などにより、資産に損害を受けた場合等に所得控除を受けられます。
対象者は、所得金額が38万円以下の納税者及び配偶者や家族で、納税者と生計を同一にする者です。対象物は、納税者が生活に必要な住宅、家具、衣類等です。
事業用の資産や別荘、書画、骨とう、貴金属等で1個又は1組の価額が30万円を超えるものなどは該当しません。
雑損控除額
控除額は以下の2つうち金額が大きくなる方です。損失額が所得金額から控除しきれない場合は、3年繰り越しで所得金額から控除することもできます。
—–
1.雑損控除額=差引損失額-総所得金額等×10%
2.雑損控除額=差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
差引損失額=損害金額+詐害関連支出の金額-保険金等の補填金額
—–
参考:
No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|所得税|国税庁
個人事業主が認識する控除3.医療費控除
納税者及び配偶者や家族で、納税者と生計を同一にする者に使用した医療費の一定金額を所得控除として受けられます。
医療費控除額
医療費控除額=支払った医療費-保険金などで補填される金額※1-10万円(or 総所得金額の5%※2)
※1.生命保険契約などの入院費給付金、健康保険の高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
※2.その年の所得金額が200万円未満の場合、所得金額の5%の金額になります。
支払った医療費には以下のものも含まれます。この経費を意識していない人は非常に多くもったいないです。必ず認識して領収書の保存や記録をしておきましょう。
—–
・通院に使った交通費(電車、バス、タクシーなど)
・病院以外の薬局で購入した市販薬
・健康保険適用外の差額ベッド代
—–
参考:
No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|所得税|国税庁
個人事業主が認識する控除4.社会保険料控除
納税者及び配偶者や家族で納税者と生計を同一にする者の社会保険料、または国民年金保険料と同額を社会保険料控除として、所得金額から差し引くことができます。
さらに、未納分の国民年金保険料を支払った場合にも、支払った年度の確定申告時に社会保険料控除として処理できるという結構ありがたいものです。
個人事業主が認識する控除5.小規模企業共済等掛金控除
納税者が、小規模企業共済法で定められた共済の掛金、確定拠出年金法で定められた個人型年金の掛金、心身障害者扶養共済制度の掛金を支払った場合、それらの掛金と同額を小規模企業共済等掛金控除として、所得金額から差し引くことができます。
小規模企業共済には、以前ご紹介した倒産防止共済も含まれます。
参考:
最大8000万円融資!倒産防止共済|経営セーフティ共済とは
個人事業主が認識する控除6.生命保険料控除
納税者が特定の生命保険料、介護医療保険料を支払った場合に、生命保険料控除として適用限度額12万円までで一定の金額を所得金額から差し引くことができます。
生命保険料控除は、現在加入している生命保険の契約締結日によって控除額が変わります。以下を参考にしてください。
1.新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)の生命保険料控除額
・20,000円以下の場合:支払保険料等の全額
・20,000円超40,000円以下の場合:支払保険料等×1/2+10,000円
・40,000円超80,000円以下の場合:支払保険料等×1/4+20,000円
・80,000円超の場合:一律40,000円
2.旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)の生命保険料控除額
・25,000円以下の場合:支払保険料等の全額
・25,000円超50,000円以下の場合:支払保険料等×1/2+12,500円
・50,000円超100,000円以下の場合:支払保険料等×1/4+25,000円
・100,000円超の場合:一律50,000円
3.新契約と旧契約の双方に加入している場合の生命保険料控除額
・新契約のみ生命保険料控除を適用の場合:1に基づき算定した控除額
・旧契約のみ生命保険料控除を適用の場合:2に基づき算定した控除額
・新契約と旧契約の双方について生命保険料控除を適用の場合:1に基づき算定した新契約の控除額と2に基づき算定した旧契約の控除額の合計額(最高4万円)
個人事業主が認識する控除7.地震保険料控除
納税者が、特定の損害保険契約に関する保険料や掛金を支払った場合、一定金額を所得控除として受けられます。
その年に支払った損害保険料の種類と金額に応じて、以下の金額が控除額になります。
地震保険料の地震保険料控除額
・5万円以下の場合、支払金額
・5万円超の場合、5万円
旧長期損害保険料の地震保険料控除額
・1万円以下の場合、支払金額
・1万円超2万円以下の場合、支払金額÷2+5千円
・2万円超の場合、1万5千円
両方がある場合の地震保険料控除額
・1、2それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高5万円)
個人事業主が認識する控除8.寄付金控除
納税者が国や地方公共団体、特定公益法人などに対して特定寄附金を支払った場合、一定金額を所得控除として受けられます。
政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金、及び公益社団法人等に対する寄附金のうち一定ものは、所得控除の代わりに税額控除を選択することもできます。
寄附金控除(所得控除)額
—–
1.(その年に支払った政党に対する寄附金の合計額-2,000円)x30%=政党寄付金特別控除額
2.その年の総所得金額等の最大40%の相当額、または政党等寄附金特別控除(税額控除)
—–
※政党に対する寄付金は、総所得金額等の40%が限度
※特別控除額は、所得税額の25%が限度
※政党寄付金特別控除額は100円未満切り捨て
寄附金特別控除(税額控除)額
認定NPO法人等、及び公益社団法人等に対する寄付金のうち一定のものは、税額控除を選択できます。詳しくは下記のURLをご参照下さい。
参考:
寄附金を支出したとき|税について調べる|国税庁
No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|所得税|国税庁
No.1154 政治献金と寄附金|所得税|国税庁
個人事業主が認識する控除9.寡婦控除、寡夫控除
納税者が所得税法上の寡婦(夫と死別)または寡夫(妻と死別)に当てはまる場合、一定金額を所得控除として受けられます。
寡婦が控除できる金額は27万円(特定の寡婦の場合は35万円)です。また、寡夫が控除できる金額は27万円です。
寡婦控除の要件
寡婦とは、納税者本人がその年の12月31日次点で、以下のいずれかに当てはまる人のことを言います。
—–
1.夫と死別、若しくは離婚した後、婚姻をしていない女性、又は夫の生死が明らかではない女性で、扶養親族または生計を一にする子(総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族となっていない人)がいること。
2.夫と死別した後婚姻をしていない女性、または夫の生死が明らかでない一定の女性で、合計所得金額が500万円以下であること。
—–
また、特定の寡婦とは、寡婦に該当する人の中で、以下の要件すべてに当てはまる人です。
—–
1.夫と死別、または離婚した後、婚姻をしていない女性や夫の生死が明らかでない女性。
2.扶養親族である子がいる女性。
3.合計所得金額が500万円以下である女性。
—–
寡夫控除の要件
寡夫は、納税者本人がその年の12月31日次点で、以下のいずれかに当てはまる人のことを言います。
—–
1.合計所得金額が500万円以下である男性。
2.妻と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていない男性、または妻の生死が明らかでない一定の男性であること。
3.生計を一にする子(総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族になっていない人)がいる男性。
—–
個人事業主が認識する控除10.勤労学生控除
納税者が所得税法上の勤労学生(職業を持つ学生)の場合、勤労による総所得金額が65万円以下、かつ勤労による所得以外の所得が10万円以下であれば、27万円を所得控除として受けられます。
例えば、給与収入が130万円であれば、給与所得控除が65万円以下になります。この場合勤労学生の納める税金は0円ということになります。
130万円(給与収入)-65万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)-27万円(勤労学生控除)=0円(所得)
また、勤労学生は所得税の所得控除27万円の他、確定申告を行うことで、住民税の所得控除26万円を受けることもできます。
勤労学生の要件
勤労学生の判定は、その年の12月31日時点において以下の要点に当てはまるかどうかで判断されます。
—–
1.小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学などの学生、生徒または児童
2.国、地方、学校法人などが設立した学校の生徒で、職業に必要な技術課程を履修するもの
3.職業能力開発促進法の認定職業訓練法人で、一定の要件に当てはまる課程を履修するもの
—–
個人事業主が認識する控除11.障害者控除
納税者及び配偶者や家族で、納税者と生計を同一にする者に障害者がいる場合、一定金額を所得控除として受けられます。
障害者控除額
—–
・控除できる金額は障害者一人につき27万円
・特別障害者に該当する場合は40万円
・特別障害者と同居している場合は75万円
—–
障害者控除は、16歳未満で扶養控除の適用がない扶養親族にも適用されます。障害者控除の対象となる人はこちらを参考にしてください。
個人事業主が認識する控除12.配偶者控除
納税者に所得税法上の控除対象配偶者(夫or妻)がおり、配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下である場合、一定金額を所得控除として受けられます。
配偶者控除額
—–
・一般の控除対象配偶者は38万円の控除額
・その年の12月31日で70歳以上の場合は、老人控除対象配偶者として48万円の控除額
—–
パートなどで働く配偶者(年間の合計所得金額が38万円以上の配偶者)を考慮して、配偶者控除を補う形で次の配偶者特別控除が存在します。
個人事業主が認識する控除13.配偶者特別控除
配偶者に38万円を超える所得があり配偶者控除が受けられない場合でも、配偶者の所得金額に応じて最大38万円を所得控除として受けられます。
配偶者特別控除の要件
納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下、かつ、配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満の場合に、配偶者の所得金額に応じて認められるものです。
—–
・配偶者の収入が103万円超141万円未満の場合に配偶者特別控除の対象となる
・配偶者特別控除は夫婦の間で互いに受けることはできない
・配偶者控除と配偶者特別控除を同時に受けることはできない
—–
参考:
No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか|所得税|国税庁
個人事業主が認識する控除14.扶養控除
納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合、条件によって38万円~63万円を所得控除として受けられます。
扶養控除の要件
—–
・控除対象扶養親族は、扶養親族のうち、その年の12月31日時点の年齢が16歳以上の人
・生計を一にしている配偶者以外の親族が、合計所得38万円以下の場合に扶養控除を受けられる
・生活費の仕送りをしている場合、生計を一にしているとみなされ控除対象扶養親族になる場合がある
—–
個人事業主が認識する控除15.青色申告特別控除
個人事業主等が確定申告を行う際、白色申告ではなく青色申告を選択すると、課税所得から最大10万円の控除を受けられます。
また、複式簿記での記帳を行い、確定申告時に貸借対照表と損益計算書を税務署に提出すれば、課税所得から最大65万円の控除を受けられます。
青色申告では、帳簿を複式簿記で管理していれば65万円、簡易簿記で管理していれば10万円を課税所得から控除できます。これを青色申告特別控除と言います。
個人事業主が意識すべき所得控除まとめ
個人事業主は事業を営んでいるとは言えあくまでも個人です。個人で事業を営むということは、小回りが効きリスクが少ない反面、所得控除など受けられる恩恵にも限界があります。
今回ご紹介した15の所得控除は、その多くが個人事業主だけではなく私たち1人1人の生活に密着したものです。
認識しておかないと受けられない控除もあるため、しっかりとチェックして最大限の恩恵を受けられるようにしてください。
「