確定申告で恐怖の追徴課税…誰もが対象になる加算税と延滞税とは

確定申告で恐怖の追徴課税…誰もが対象になる加算税と延滞税とは
千須和知久
監修者
千須和 知久 税理士
S55東京国税局入局、H28ちずわ税理士事務所を開業。
財務に悩む経営者(中小企業)に「しっかり寄り添う対応」を信念とする。国税局の立場と税理士の立場の両方を経験している税務業界40年の大ベテラン。法人税、所得税、相続税・贈与税、税務相談・申告、事業継承、税務調査対応など幅広業務を対応

確定申告と加算税・延滞税などの追徴課税

社長であればご存知の通り、会社は事業所得や不動産収益、また一時所得など、その年に収入があった場合、確定申告を行い法定申告期限内に所得税を支払う義務があります。

確定申告は自己申告なので、中には所得を過少申告、無申告、不納付、事実の隠蔽または仮装する方たちがいます。これはもちろん違法行為で、追徴課税の対象になります。

追徴課税とは
申告漏れや脱税などの理由で、納税すべき金額よりも確定申告を行い納税した金額が少なかった場合に、追加で支払うことになる税金のこと。

追徴課税は行政的制裁の意味合いがあり、4つの加算税(過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税)と延滞税がある。

税務署は、個人事業主、または法人を定期的に訪問調査し、確定申告の事実を確認します。これを税務調査と呼び、事業を長く営んでいる会社であれば、ほぼ必ず経験する調査です。

もし、「税務署なんて1回も来たことないよ。」という方は単純に順番が回ってきていないからと思った方が良いでしょう。

税務調査は、確定申告書を出してから、おおよそ3~5年以内に順番が回ってきます。

参考:
税務署が来た…税務調査の可能性が高い会社9パターン

もちろん、行政的制裁対象になる場合は、個人、法人問わず追徴課税を徴収するのですが、法人や社長がターゲットにされやすいのは事実です。(ターゲットというのはちょっと変ですが……。)

そんな税務調査にドキドキしながら事業を行うよりも、毎年きちんと確定申告を行い、法的に認められた節税を行っていく方が賢明です。

今回は、税務調査の結果、指導を受ける可能性がある4つの加算税(過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税)と延滞税について説明していきます。

加算税1.過少申告加算税とは

過少申告加算税とは、期限内に確定申告書を提出した後、修正申告書の提出又は更正によって追加税額が生じた場合に課税される附帯税のことです。

この加算税はあくまでも悪意がない場合に加算される税金です。そのため、税務調査を受ける前に、自ら修正申告を出した場合は加算税はかかりません。

過少申告加算税の税額

原則として不足した税額(追加本税)の10%を納めます。ただし、その追加本税のうち期限内確定申告額、または50万円のいずれか多い金額を超える部分については15%の割合で課税されます。

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例1)当初の納付税額が60万円で、追加本税が100万円の場合は以下のようになります。

(60万円×10%)+(40万円×15%)=120,000円

例2)当初の納付税額が20万円で、追加本税が10万円の場合は以下のようになります。

20万円×10%=20,000円

【ポイント】
税務署の調査を受ける前に、自主的に修正申告を行うことで、追加本税が50万円までは5%まで引き下がります。
自主的な修正申告により過少申告加算税がかからない時代もありましたが、平成29年1月1日以降では
加算税が発生するようになりました。
ちなみに50万円を超えると10%になります。

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もし追加本税が59,000円など10,000円未満の端数が出る場合は切り捨てて、50,000円となります。さらに計算の結果、過少申告加算税が5,000円未満となる場合は加算税の納税義務はありません。

加算税2.無申告加算税とは

無申告加算税とは、期限までに申告をしなかった場合に課される加算税のことです。

無申告加算税には、「税務署の調査により無申告が発覚した場合」「税務署の調査前に自主的に期限後申告をした場合」の2種類あります。

無申告加算税の税額

原則として、納付すべき税額の15%を納めます。ただし、50万円を超える部分は20%の割合で課税されます。

また、税務署から調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、納付すべき税額の5%を納めます。

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例1)税務署から調査を受け、納付する税額が120万円だった場合、

(50万円×15%)+(70万円×20%)=215,000円

例2)自主的に期限後申告をして、納付する税額が120万円だった場合、

120万円×5%=60,000円
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加算税3.不納付加算税とは

源泉所得税の納期限に遅れてしまった場合に課される加算税のことです。

不納付加算税の税額

原則として、納付すべき税額の10%を納めます。ただし、税務署から調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、納付すべき税額の5%を納めます。

加算税4.重加算税とは

重加算税とは、本来支払うべき税金を故意に隠蔽、仮装した時に重いペナルティとして課される加算税のことです。

主に過少申告、無申告が発覚した場合に、税務署から重加算税の対象とみなされる場合があります。

重加算税の場合は他の加算税と比べて支払う額が非常に大きく、期限内申告の場合であれば税金の35%、期限後申告であれば40%となります。

重加算税の税額

過少申告加算税に代えて、その追加本税の35%を納めます。

無申告加算税に代えて、その納付税額の40%を納めます。

不納付加算税に代えて、その納付税額の35%を納めます。

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例1)税務署の調査で悪質な過少申告が発覚し、納付する税額が200万円だった場合、

200万円×35%=700,000円
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延滞税とは

税金の完納が法定の期限を過ぎてしまった場合に、納付が遅延した期間と未納税額に課せられるのが延滞税です。延滞税は故意であろうが、過失であろうが全て平等に発生する追徴課税です。

重加算税の税額

計算方法は年度によって異なりますが、原則として、遅滞した税額に対し以下の税額を納めます。

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・納期限の翌日から2か月間は、遅滞した税額に対し年7.3%
・その後の期間は、遅滞した税額に対し14.6%

【ポイント】
延滞金の利率は工程歩合によって変動しています。

「公定歩合」という言い方は今はしません。
今は、「基準割引率および基準貸付利率」と呼びます。

昔は日銀が銀行に貸し付ける金利がそのまま銀行の貸付金利に連動していたのですが
1994年に金利自由化して、直接連動しなくなったので呼称が変わりました。

その為、現在の重加算税の計算では、7.3%と基準貸付利率+4%のどちらか低い率で計算していましたが、基準貸付利率が現在は0.3%と超低率である為、4.1%で計算されます。

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確定申告で恐怖の追徴課税…加算税と延滞税まとめ

納税は国民の義務です。そのため、過失であろうとも温情処置はありません。

個人事業主にとっても、法人にとっても追徴課税を支払うことは非常にもったいないことなので、絶対に避けなければいけません。

とはいえ、何らかの事故で追徴課税が発生してしまうことはあるかもしれません。そして、場合によっては追徴課税で倒産してしまうケースも珍しくはありません。

心配な時はやはり税理士などの専門家にお願いし、事前の対策を練った方が良いでしょう。

誰に対して、どのような支払いが遅れる場合も、以下の「どうにもならない場合の基本3か条」は必ず守ってください。

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支払いがどうにもならない場合の基本3か条
1.状況の把握
2.税理士との対応策相談
3.事前の話し合い
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参考:
税金…社会保険…請求…給与…払えない時の3つの対応方法

もちろん、会社が収める税金の種類は、いつ、どこに、どうやって支払うかも押さえておきましょう。

参考:
滞納で倒産は避けたい…会社が納める税金9種+α

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